先日、電話のご相談にてとんでもなくお怒りの方からの連絡がありました。結局約1時間半の間、パンについての具体的な話は一切できずに、終始ただただこの一点のみに関して話し合うこととなりました・・・んっ・・・というかひたすら怒りをぶつけていただいただけだったかも(笑)このような内容のお電話は正直初めてでしたが、素直で率直なご意見、実によく理解することが出来ましたし、正直思いは同じであると感じましたね。今回は...

先日、電話のご相談にてとんでもなくお怒りの方からの連絡がありました。
結局約1時間半の間、パンについての具体的な話は一切できずに、終始ただただこの一点のみに関して話し合うこととなりました・・・
んっ・・・というかひたすら怒りをぶつけていただいただけだったかも(笑)
このような内容のお電話は正直初めてでしたが、素直で率直なご意見、実によく理解することが出来ましたし、正直思いは同じであると感じましたね。
今回はそんな強烈なお怒りの内容をちょこっとばかりご紹介しながら、どうしていくことが正しいのか、責任者はどうあるべきなのかなどなど、考えを巡らせて行きたいと思います。
話が白熱しだしてきた、電話開始から約30分経過後・・・
「正直に言ってもいいですか、聞いてもらっていいですか」
「今すぐにでもたたき出したいですよ正直」
「自分の仕事の遅さで、どれだけ周りに迷惑をかけているのかが全くわかっていないんですから・・・」
「なぜ急ごうとしないんですかね・・・こうテキパキと動こうとか、周りの人を真似てもっと素早く動かなくちゃとか思わないんですかね」
「ただ遅いだけなんてレベルじゃないんですよ・・・多分普通の人の3倍、私の6倍は時間がかかるんですよ」
「あんぱんを12個包むのに普通どれくらいかかりますか???多分遅くても10分くらいじゃないでしょうか」
「それを彼女がやると40分はかかるんですよ、ひどすぎませんか!!!」
「キャベツを千切りに切ってパンにはさみ、揚げたトンカツをのせてソースをかけるというコッペパンがあるんですが、あまりにも成形が遅すぎるのでそちらのサンドイッチを手伝わせたら、なんと30分して様子を見に行ったら、まだキャベツを切っているんですよ」
「そのコッペパン全部で8個トンカツを乗せるだけなんです、しかもトンカツはすでに揚げて渡してあるんです」
「あまりにイライラしてそのまま放っておいたら、終わりましたと言ってきたのが2時間後です」
「トンカツコッペ8個作るのに2時間ですよ2時間・・・考えられますか」
「向いていないとは思うんですよどうみても・・・、ただ本人がどうしてもパンを作りたい、将来はパン屋を開きたいというので、何とか鍛えてあげたいと思って採用したらしいのですが、もうその使えなさといったらいったい何に例えようか・・・と考えてしまうほど、気が遠くなるほど使えないんです」
「でもですね、他のパートさんは皆かわいがってくれて、本人は居心地がいいみたいなんですよ」
「そりゃパートさんには責任がありませんから、それで良いかもしれませんが、こちとらは会議のたびに人件費をかけすぎだと言われていて、8人いるパートさんは皆優秀なんですが、社員の2人が超仕事が遅い問題児なんです」
「しかも問題なのは、この超遅い2人が毎日出勤していて、他の仕事が早いパートさんは週3日程度しか来れないんです」
「ですからメインはこの2人との仕事ということになり、でも実際の作業効率のメインはパートさんなんですよ」
「私も他の支店から来た時には、女性ばかりの明るい職場で、腕が鳴ると張り切っていたんですよ」
「ところが蓋を開ければ2匹の亀じゃないですか」
「いや、カメがかわいそうになりますよ、ほんとうにそれほどひどいんです」
「そんな子たちとどうやって接していけばいいものなのでしょうか??」
「当然ながらもっと早く出来るように頑張ろう・・・的なことは日常的に言い聞かせていますし、こうやればもっと早くなるでしょと見本を見せたりはしています」
「ただあまりきつく言ってしまうと暗くなってしまうじゃないですか」
「だからと言ってやんわり言っても、何も変わらないんですよ実際」
「もうあきらめて辞めてもらった方が良いでしょうか」
「それとも何か対策があるものなのでしょうか」
「昨日よりも今日、今日よりも明日、一個でもいいから多くのパンが作れるように頑張ります・・・せめてその姿勢だけでもいいんですよ、しかしそれもどうも感じません」
「申し訳ありませんとかスイマセンとは言うんですけど、言われたことを改善している姿と言うのは一向に見受けられないのです」
「人間的にはとても素敵な二人だとは思うんです、似た者同士と言った感じで」
「ただ、この二人が特別仲が良いという訳でもないのですが、私からしたらどちらも全く同じで、毎日朝からイライラしっぱなしで、そろそろ限界かなと思って、他の人の意見も聞いてみようと思い今回ご相談させていただいたのですが・・・」
さてまずはこんな画像を見てひとまず落ち着きましょう(笑)
なぜこの相談者様の意見が良くわかるのかと言いますと、私自身もずっとずっと仕事の呪い、いやいや仕事ののろい人との接し方で悩んできた一人であったからなのです。
と言いますか、今現在もまさに二人の超仕事が遅い人と一緒に働いていますがなにか・・・
なので言い分は実によくわかりますし、そのご苦労には一礼したくなるのです。
他のカテゴリでも何度か登場することになる「仕事が超遅い人」というのは、あなたの職場にはいらっしゃいますか?
私の職場には常にいらっしゃいますよ・・・なぜか??
そして今回のご相談者様にとっては、どうやら初めてのことらしいのです。
私の周りには常にいますよ・・・そう申しあげた途端に堰を切ったようにこの話題になってしまったわけですが、本当に困りますし悩みますし、いったいどうしたら良いのかの真の対処法というのは未だに解りません。
私はその件では何人もの人に辞めていただくことになりましたし、「いかに向いていないか」を残酷なようですけどじっくりと話し合い、合意の下で辞めていただいてきました。
作業には流れがどうしても必要です。
流れるような作業に大きな岩が立ちはだかることによって流れは悪くなり、それは必ず品質となって現れます。
それが手作りの難しさでもあり醍醐味でもあるわけですが、特にパンと言う消費期限の短い食品の製造販売というのは時間との勝負でもあります。
”短い営業時間の中で、いかに高品質の商品をチャンスロスなしで提供することが出来るか”
この観点からしても、作業の流れとかスピードというのは必須なのであり、準備とか段取りとかチームワークというものが最も求められる職種なのが焼き立てパン屋さんなのです。
そう考えると、流れに乗れない、スピードに乗れないという人はそれだけで邪魔になることがあり、しかもそれは品質にも影響を与える訳ですから、とても見過ごせないと思うことは当然のことなのだと思うのです。
唯一それが許されるとしたら、それはご自分のお店である、あるいはご家庭でのパン作りである場合のみで、仕事としてこの作業に携わる限りにおいては、絶対に許されざる行為なのです。
私個人のことも今回のご相談者様にはお伝えしましたが、誠に残念ながらこのお二人が今後仕事が早くなっていく、そして立派なパン職人になっていく可能性はゼロではないかもしれませんが、数年では無理と言わざるを得ません。
人件費で考えても労働分配率で考えても営業利益で考えても、この人たちを雇用する為の特別手当があるなら別ですが、そんなものはある訳がありませんので、適正から外れた人は居場所がないというのが現実です。
販売員になる、または事務員になるという会社の移動によって雇用を維持することは出来たとしても、パン職人としては早い段階で退いていただくしかないのです。
私がまさに現実問題として一緒に作業をしている二人も、間もなく辞めていただくことにはなるでしょう。
ほぼ毎日、どうして作業がそんなに遅くなるのか、どのような段取りを組むべきだったのかというアドバイスは行っています。
そのアドバイスを時には真剣に、時にはポカ~ンとした顔で、時には反省するような態度で聞いてはいますが、ほぼ実行はされません。
単に逆らって実行しないのか、それとも実行したくてもできないのか、そのあたりは本人ではないのでわかりません。
しかし、現実問題として他の人が10分で出来ることに1時間かかることは確かですし、それはどんなことをやらせたとしてもやはり超遅いですし、無駄な動きばかりしていて、とても見るに絶えません。
このように書くと誤解を生むかもしれませんが、このような方達の履歴書を見ると、確実に職場を転々としています。
恐らくは転々としたいわけではなくて、辞めさせられてしまうのでしょう。
それが解るだけに、これでもかと言うくらい話し合いますし、仕事を実際に見せますし、具体的な段取りを一緒に組んだりもしてきました。
しかし翌日には全く無駄であったことを思い知らされるのでした。
私にも向いていない仕事は山ほどあると思いますし、好きで長年この仕事が出来ていることには心から感謝しています。
向いていない仕事であっても ”好きだ” と考えることは間違いではない訳で、この人達のやる気は自由であるべきだとは思います。
しかしそれを許さない現実もまたあるのです。
いつでも相談に乗るから、遠慮なく連絡して・・・そう言って別れて連絡が来ているのは2人くらいかな?
いやな役回りですが、それこそが責任者の一番の仕事だとお考えになり、そしてまた採用されてくるであろう人達と真摯に向き合う、けしてそのことから逃げないということが大切ではないかと思います。
今回は人間的に問題がある人と言うことではありませんので、育ててあげられなかったことは誠に残念でしたが、応援したい気持ちは持てると思うのです。
しかし世の中には存在自体が問題だという人も必ずいて、そんな人を採用してしまったらそれはそれでかなり大変です。
ぞっとするような ”事件” すれすれの事態を巻き起こす可能性がある危険人物、危険な思想を持った人というのも必ずいます。
面接の際にそれをどこまで見抜けるかも大切なことですが、難しいでしょうね。
そんなエピソードもこちらでご紹介していますので合わせてご覧ください。
また、ますます広がるコロナ禍において、これだけは知っておこうという動画を紹介しています。
是非ご覧ください。
非公開だと気が付くのが遅くなるので返信が遅れたことをお許しください。
ご質問についてですが、企業の、しかもチェーン店の方に具体的にアドバイスすることは、オーナーあるいは責任者の方の許可がなければ行えません。
なぜなら、配合や製法が解らないとお答えできないからです。
温度を計らないとか、完成品に責任を持てないような店長の下で働くのは大変なことですよね、お察しします。
そしてももんがさんがその品質について悩んでいることもよくわかります。
しかし、ことは「こうすれば済む」といった単純なことではなく、良いパンを作るために必要な総合的なノウハウを勉強しながら習得していくしかないのです。
いずれそのお店を後にして、他のお店で働く日が来るかもしれません。
いかなるお店で働こうとも、結局は悩んだ分だけ自分のノウハウになりますので、今は解らずとも今悩んでいることに立ち向かっている姿勢こそが大切なのだと思います。
私もいまだに毎日のように悩んでいます。
悩み続けることがパン作りであるような気もします。
問題点も答えも毎日毎回何度も何度もやってきます。
それがパン作りの仕事であることだけは確かです。
ですので、今は解らなくても悩み続ければ必ずわかる時が来ます。
それがパン職人の証なのです。