私がパン屋に就職した頃は、まだ街にはコンビニが一件しかありませんでした。
ファミレスは確か・・・・・無かったかな??
村でも町でもなく、市だったのにですよ。
そんな時代だったから、焼き立てのパンと言うのは、温かいと言うだけでお客様にとっては新鮮な驚きだったろうと思うのです。
おっと、こんな出だしだと、かなりのお爺さんであるかのような印象を持たれてしまうかもしれませんが、まだ52歳ですし、見た目も若いのですよ本当に・・・(笑)
その頃からすれば、今ではコンビニもファミレスも、更には吉牛やすき屋などの丼店も合わせれば、まさに星の数ほどですよね。
昼夜を問わずにどこででも、どんなものでもお金さえあれば食べられる時代。
食べ物屋が星の数になると、次に登場するのがダイエット関連商品や運動器具・・・
人間の欲望と企業の戦略というのは、どこまで行ってもいたちの追いかけっこみたいなものなのかもしれませんね。
同じく、パン屋を取り巻く環境も大きく変化してきている事は言うまでもありませんが、我々パン屋にとって、未来永劫変わる事のないものがあるのです。
それが技術力です。
日本の製造業がトータル的に世界屈指であることは、だれでもが知っています。
物を作るという技能しかり、発想しかり、繊細さしかりです。
日本のパンの品質が、今や世界に誇れるレベルになっていると言う事も、なんとなくご存知なのではないでしょうか。
ではなぜ、日本人というのはパン作りでは後発なのにも関わらず、世界が絶賛する優れたものを作り出す事が出来るのでしょうか?
・・・と、そんな事を私が言うのはおこがましいので、あえて一つだけ上げるとしたら、それは ”心配り ”を重んじてきた民族だからなのではないでしょうか?
食べてくれる人の事を考えて作る・・・・
食材に感謝しながら調理する・・・・
食べ物を作るという工程は同じでも、そこにこれらの気持ちが入る事で、繊細さというのは生まれてくるのではないでしょうか。
パンという食べ物も、今では本当にどこででも買う事が出来ます。
石を投げればパンに当たるほど、どこにでもパンは置かれているのです。
だからこそ差別化した商品を・・・・特化した商品を開発して・・・・
と言う流れになってしまうのでしょうが、それは大手が考えれば良い事なのです。
私達中小が、今もこれからも守っていかなければならないのは、流行を追う事でも、機械化する事でもなく、ましてや価格競争に乗る事でもありません。
常に自らの技術を磨き、安定した商品を、地域のお客様の為に作り続ける事、ただそれだけで良いのです。
どうして流行りを追いたがるのでしょうか?
それは、お客様から聞かれて作らない訳にはいかないと言う場合もあるでしょうし、業者が売れ筋だからと紹介していく場合もあるでしょうし、そもそも時代に乗り遅れる訳にはいかない・・・的な感覚も芽生えてしまうのでしょう。
作り方も良く知らない商品であっても、簡単にできるミックス粉などがすぐに手に入りますから、取りあえず品揃えしておくか・・・・と言う事になる。
お店の商品構成がブレる瞬間です。
特に技術と言うものに自信が無いお店ほど、どうしても流行りを追ってしまう傾向があるようです。
それのどこが悪いの!!
そう言われそうですが、別に悪くなんてありません。
ただ、自分でそう言い切れる自信があるのなら・・・・ですが。
ただ安定した商品を作っているだけで売上が上がるなら、誰も苦労はしないよ!
そんなご意見もあるはずです。
しかし、この安定した商品というのが、実は考えているほど簡単ではないのです。
私が依頼先のお店に伺った時、このように言われるオーナーと言うのは、残念ながら技術者とは言えない場合がとても多いのです。
どう言う事か??
製パンの技術と言うのは、いったい何を指してそう呼ぶのでしょうか?
それは、細かく言えばきりがありませんので、かいつまんで申し上げれば、パン生地の扱いがいいかげんであると言う事につきるのです。
パン屋であろうとホームベーキングであろうと、パン生地に触れることから全てが始まります。
このパン生地に触れる時の触れ方いかんで、パンの品質は大きく変わって行ってしまうのです。
パン作りでは、捏ねるを手で行う人も少なからずいるとは思いますし、その後は分割したり成形したりと、必ず手が必要になりますよね。
考えてみてください。
この時の手が、機械で出来るなら、もうとっくに町のパン屋さんなんて存在していないのです。
ここの部分の繊細さを出そうとして、機械メーカーは日夜開発を行っているのですよ。
それでも未だに完成させる事が出来ない。
だから、手作りが存在しているのではないですか?
それ位、人の手というのは要なのだと私は思うのです。
それなのにですよ・・・・・
生地が切れようが乾こうがおかまいなし、分割の大きさはバラバラ、並べ方はメチャクチャ、膨らみ加減はいいかげん、成形の形はバラバラ・・・・
そんな人にパンを作ってほしくない・・・・そう思うのは私のエゴでしょうか。
私が自分のパン作りに目覚めてから現在に至るまで、ず~っと言い続けている事は、
”もっと優しく丸めなさい ”
という言葉です。
技術を重んじない人には、どうでもいい言葉であり、何の説得力も持たない言葉でしょう。
しかし、パン生地の丸め方を見ただけで、その人の製パンの姿勢全てが見えてしまうのです。
難しい成形が出来る事が技術なのでしょうか?
多くのレシピを持ち、有名店を渡り歩いた人が技術者なのでしょうか?
パン生地と向き合う謙虚な姿勢を持ち、手作りの本当の意味を知っている、そんな人が技術のある人なのであり、その思いこそが技術力と呼べるのではないでしょうか。
早朝からパンを作り、生地を丸めていると朝日が入ってくる・・・・
その朝日がパン生地に当って、生地の表面がキラキラと光っている・・・・
そんな瞬間が私は大好きです。
皆様はパン作りのどんな瞬間がお気に入りですか?
手でパン生地に触れた瞬間、生地の温度や捏ね状態、更には砂糖や塩や油脂の配合量、小麦粉の質、酵母の種類と量などが概ね解ります。
すると、それらを生かす為には、この先どのように生地に触れていく事が最善なのかを判断する事ができますし、完成品を想像する事ができます。
要するに、手で生地に触れただけで、おおよその配合と完成度合いが解ると言う事です。
良くある質問に、どうやったら綺麗に丸められるのでしょうか? とか、麺棒のあてかたをアドバイスしてほしいとか、生地切れはどうして起こるのでしょうかとか、丸める方向はどれが正しいのかとか、とにかく言葉にしようが無い事を聞かれる方がたくさんいらっしゃいます。
しかし、それはどこまで行ってもご自分で掴んで納得していただくしかないのです。
だからこそ、ある程度の数は作らないと掴みようもないと言う事になってしまうのです。
また、数を作っても気持ちがなければ、結局は掴む事は出来ないということも、もうお解りいただけましたよね。
手取り足取り教えても、何年経っても出来ない人には出来ないのです。
また技術と言うのは、本来教える物でもなく、必要に駆られて必死な気持ちで他人の真似をする事から始まるのではないでしょうか?
つまり、昔から良く言われている ”盗む ”と言う事です。
まっさらな新品のスポンジのように、何でも吸いこむ事が出来るような心構えで生地と向き合ってみてください。
聞く耳を持たない人に、生地は語りかけてはくれませんから・・・・
そして、生地の気持ちが解るようになった時、はじめて自分の技術力に自信が持てるようになるのだと言う事を、どうか信じて欲しいと思います。
ファミレスは確か・・・・・無かったかな??
村でも町でもなく、市だったのにですよ。
そんな時代だったから、焼き立てのパンと言うのは、温かいと言うだけでお客様にとっては新鮮な驚きだったろうと思うのです。
おっと、こんな出だしだと、かなりのお爺さんであるかのような印象を持たれてしまうかもしれませんが、まだ52歳ですし、見た目も若いのですよ本当に・・・(笑)
その頃からすれば、今ではコンビニもファミレスも、更には吉牛やすき屋などの丼店も合わせれば、まさに星の数ほどですよね。
昼夜を問わずにどこででも、どんなものでもお金さえあれば食べられる時代。
食べ物屋が星の数になると、次に登場するのがダイエット関連商品や運動器具・・・
人間の欲望と企業の戦略というのは、どこまで行ってもいたちの追いかけっこみたいなものなのかもしれませんね。
同じく、パン屋を取り巻く環境も大きく変化してきている事は言うまでもありませんが、我々パン屋にとって、未来永劫変わる事のないものがあるのです。
それが技術力です。
日本の製造業がトータル的に世界屈指であることは、だれでもが知っています。
物を作るという技能しかり、発想しかり、繊細さしかりです。
日本のパンの品質が、今や世界に誇れるレベルになっていると言う事も、なんとなくご存知なのではないでしょうか。
ではなぜ、日本人というのはパン作りでは後発なのにも関わらず、世界が絶賛する優れたものを作り出す事が出来るのでしょうか?
・・・と、そんな事を私が言うのはおこがましいので、あえて一つだけ上げるとしたら、それは ”心配り ”を重んじてきた民族だからなのではないでしょうか?
食べてくれる人の事を考えて作る・・・・
食材に感謝しながら調理する・・・・
食べ物を作るという工程は同じでも、そこにこれらの気持ちが入る事で、繊細さというのは生まれてくるのではないでしょうか。
パンという食べ物も、今では本当にどこででも買う事が出来ます。
石を投げればパンに当たるほど、どこにでもパンは置かれているのです。
だからこそ差別化した商品を・・・・特化した商品を開発して・・・・
と言う流れになってしまうのでしょうが、それは大手が考えれば良い事なのです。
私達中小が、今もこれからも守っていかなければならないのは、流行を追う事でも、機械化する事でもなく、ましてや価格競争に乗る事でもありません。
常に自らの技術を磨き、安定した商品を、地域のお客様の為に作り続ける事、ただそれだけで良いのです。
どうして流行りを追いたがるのでしょうか?
それは、お客様から聞かれて作らない訳にはいかないと言う場合もあるでしょうし、業者が売れ筋だからと紹介していく場合もあるでしょうし、そもそも時代に乗り遅れる訳にはいかない・・・的な感覚も芽生えてしまうのでしょう。
作り方も良く知らない商品であっても、簡単にできるミックス粉などがすぐに手に入りますから、取りあえず品揃えしておくか・・・・と言う事になる。
お店の商品構成がブレる瞬間です。
特に技術と言うものに自信が無いお店ほど、どうしても流行りを追ってしまう傾向があるようです。
それのどこが悪いの!!
そう言われそうですが、別に悪くなんてありません。
ただ、自分でそう言い切れる自信があるのなら・・・・ですが。
ただ安定した商品を作っているだけで売上が上がるなら、誰も苦労はしないよ!
そんなご意見もあるはずです。
しかし、この安定した商品というのが、実は考えているほど簡単ではないのです。
私が依頼先のお店に伺った時、このように言われるオーナーと言うのは、残念ながら技術者とは言えない場合がとても多いのです。
どう言う事か??
製パンの技術と言うのは、いったい何を指してそう呼ぶのでしょうか?
それは、細かく言えばきりがありませんので、かいつまんで申し上げれば、パン生地の扱いがいいかげんであると言う事につきるのです。
パン屋であろうとホームベーキングであろうと、パン生地に触れることから全てが始まります。
このパン生地に触れる時の触れ方いかんで、パンの品質は大きく変わって行ってしまうのです。
パン作りでは、捏ねるを手で行う人も少なからずいるとは思いますし、その後は分割したり成形したりと、必ず手が必要になりますよね。
考えてみてください。
この時の手が、機械で出来るなら、もうとっくに町のパン屋さんなんて存在していないのです。
ここの部分の繊細さを出そうとして、機械メーカーは日夜開発を行っているのですよ。
それでも未だに完成させる事が出来ない。
だから、手作りが存在しているのではないですか?
それ位、人の手というのは要なのだと私は思うのです。
それなのにですよ・・・・・
生地が切れようが乾こうがおかまいなし、分割の大きさはバラバラ、並べ方はメチャクチャ、膨らみ加減はいいかげん、成形の形はバラバラ・・・・
そんな人にパンを作ってほしくない・・・・そう思うのは私のエゴでしょうか。
私が自分のパン作りに目覚めてから現在に至るまで、ず~っと言い続けている事は、
”もっと優しく丸めなさい ”
という言葉です。
技術を重んじない人には、どうでもいい言葉であり、何の説得力も持たない言葉でしょう。
しかし、パン生地の丸め方を見ただけで、その人の製パンの姿勢全てが見えてしまうのです。
難しい成形が出来る事が技術なのでしょうか?
多くのレシピを持ち、有名店を渡り歩いた人が技術者なのでしょうか?
パン生地と向き合う謙虚な姿勢を持ち、手作りの本当の意味を知っている、そんな人が技術のある人なのであり、その思いこそが技術力と呼べるのではないでしょうか。
早朝からパンを作り、生地を丸めていると朝日が入ってくる・・・・
その朝日がパン生地に当って、生地の表面がキラキラと光っている・・・・
そんな瞬間が私は大好きです。
皆様はパン作りのどんな瞬間がお気に入りですか?
手でパン生地に触れた瞬間、生地の温度や捏ね状態、更には砂糖や塩や油脂の配合量、小麦粉の質、酵母の種類と量などが概ね解ります。
すると、それらを生かす為には、この先どのように生地に触れていく事が最善なのかを判断する事ができますし、完成品を想像する事ができます。
要するに、手で生地に触れただけで、おおよその配合と完成度合いが解ると言う事です。
良くある質問に、どうやったら綺麗に丸められるのでしょうか? とか、麺棒のあてかたをアドバイスしてほしいとか、生地切れはどうして起こるのでしょうかとか、丸める方向はどれが正しいのかとか、とにかく言葉にしようが無い事を聞かれる方がたくさんいらっしゃいます。
しかし、それはどこまで行ってもご自分で掴んで納得していただくしかないのです。
だからこそ、ある程度の数は作らないと掴みようもないと言う事になってしまうのです。
また、数を作っても気持ちがなければ、結局は掴む事は出来ないということも、もうお解りいただけましたよね。
手取り足取り教えても、何年経っても出来ない人には出来ないのです。
また技術と言うのは、本来教える物でもなく、必要に駆られて必死な気持ちで他人の真似をする事から始まるのではないでしょうか?
つまり、昔から良く言われている ”盗む ”と言う事です。
まっさらな新品のスポンジのように、何でも吸いこむ事が出来るような心構えで生地と向き合ってみてください。
聞く耳を持たない人に、生地は語りかけてはくれませんから・・・・
そして、生地の気持ちが解るようになった時、はじめて自分の技術力に自信が持てるようになるのだと言う事を、どうか信じて欲しいと思います。

- 関連記事
最終更新日 : 2020-01-20
Shenさん、コメントありがとうございます。 * by しずかな朝
少しでもお力になれているのだとしたら、このうえない幸せです。
パンのお仕事をしていらっしゃるようですが、この仕事は正に自分との闘いですね。
私も何度心が折れたことか・・・・
逆に、コメントや励ましのメールによって元気を頂いている次第です。
仲間がいる、頼って下さる人がいる、そう思って頑張るしかないのですよねきっと・・・
お互いに励まし合いながら頑張って参りましょう。
ありがとうございました。
パンのお仕事をしていらっしゃるようですが、この仕事は正に自分との闘いですね。
私も何度心が折れたことか・・・・
逆に、コメントや励ましのメールによって元気を頂いている次第です。
仲間がいる、頼って下さる人がいる、そう思って頑張るしかないのですよねきっと・・・
お互いに励まし合いながら頑張って参りましょう。
ありがとうございました。
その朝日がパン生地に当って、生地の表面がキラキラと光っている・・・・
心が打たれてしまいます〜しずかな朝さんのパン・製パンに対する真摯なる気持ちが伝わってきます。何回読んでも、その光景が目の前に浮かべ、ついいつかその作業台に立っているのは自分じゃないかとも想像してしまいます〜一方、現実な世界からまだまだ脱出できそうがない、そのストレスからひたすら大量のパンをやけ食いしている自分のいまを思うと、恥ずかしい気持ちもいっぱいです......しずかな朝さんのパンへのまっすぐな姿勢は自分への励ましになっています、感謝しています!
ちなみに、わたしも丸めが一番好きです、「やさしくやさしく」と自分に言い聞かせながらもついスピードに負けてしまう時がありますが...
寒い季節がやって来ましたので、しずかな朝さん風邪をひかないようお気をつけてパンライフを楽しんで下さいね!(不真面目な製パンの人に対しても、あまり怒りすぎないように、^ ^)