大手製パン工場を始め、ほとんどの焼きたてパン屋さんで使用されている改良剤。
種類は様々ありますが、そのほとんどの用途、つまりはその使用目的は同じです。
それは、”パン生地の品質を安定させる為” に使われるのです。
このぎょうぎょうしい名前の食品添加物は、人体に悪影響があるのかないのかは、別の項でふれていますので、ここではふれません。
各メーカーから、様々な種類の改良剤がでていますが、名前が各社微妙に違います。
それは、安定剤という名前だったり、酸化剤だったり発酵助剤だったりイーストフードだったり、酵素剤だったりと言う具合です。
無添加の物しか食べないと言う人は、非常に少人数しかいませんが、誰しもが、食品添加物は出来るだけ無い方が良いし、使わないですむなら使わずに済ませたいと考えていると思います。
では、この改良剤を使わないで、通常の作業時間で、通常通りの品質のパンが作れるでしょうか?
答えは ”No” です。
ストレート法の場合、平均的な使用量がパン生地1Kg仕込みの場合で、たったの1グラムしか使用しないこの改良剤ですが、これを入れないパン生地は、とても通常通りという訳にはいかないのです。
改良剤の使用目的は品質の安定だと記しました。
はたして、どのような働きで生地を安定させてくれるのでしょうか?
その効能とは、主に水質改善とイースト菌の栄養補給です。
パン生地がスムーズに発酵していくには、当然のことながらイースト菌の活動が主体となります。
イースト菌は、単体でも勿論発酵力があるのですが、配合中の砂糖や塩やマーガリンなどに発酵活動を邪魔され、配合によっては、まったくガスを発生させる事が出来ない場合もあります。
そこで登場するのが改良剤で、イースト菌の発酵を妨げる敵から菌をガードして、ガス発生がスムースに行われるように守ってくれるのです。
それだけではありません。
イースト菌がどんなにガスを発生させても、その母体であるパン生地そのものに、膨らむ力が無ければ、いくらガスが出ても生地は膨らみません。
膨らむ力が無い生地とは、コシの無い生地の事で、解かりやすく言うと、すぐに割れてしまう風船のような物を指します。
膨らませても膨らませても、割れてしまっては、結局フワッとしたパンにはならないのです。
では、割れない風船のような、コシのあるパン生地が出来るには何が必要なのでしょうか?
それは、以外にも水なのです。
水と言っても、正確には水の”硬度”のことで、つまり水質のことを指します。
皆さん何気なく水道水を使ってパンを作っていると思いますが、地域によって、水質が大きく違うのをご存知でしたか?
地域によっては、同じ水道水を使ってパン生地を仕込んでも、生地がだら~とダレてしまったり、逆にプリンプリンにコシの強い生地になったりしてしまいます。
そんな時に、改良剤を使っていると、水質を安定させてくれるのです。
一般的に、水道水は硬度が低く、つまり柔らかい水と言う事ですが、パン生地には最も適した硬さになっています。
しかし、井戸水や地下水などを使うと、以外に硬い水が多く、パン生地が生地切れをおこしたり、発酵過多になったりします。
そのあたりの事まで考慮しながら毎日パンを作るのは、並大抵ではありませんよね。
では、改良剤を入れないと、具体的にパン生地はどうなるのでしょうか?
まず、ミキシング終了時に、生地がダレぎみになります。 そしていつもなら発酵してきていい時間になっても、生地は膨らんできません。 同じようになるには、約2倍の時間が必要です。
更に、分割して丸めると、すぐに生地がペタンコになります。 つまり、風船がすぐに割れてしまうからです。
成形後も、焼くまでにかなりの時間を要し、オーブンで伸びません。
これが食パンだと歴然で、蓋に届かない坊主頭の食パンになります。
勿論、工夫次第で、いつも通りという訳には行かないまでも、安定した品質のパンを作る事は出来ますし、無添加のパン屋さんは常にそのような努力をしている訳ですが、一般的なパン屋さんで、軽はずみに改良剤を入れないで無添加にしようなどと息巻いても、すぐに挫折してしまうほど難しいと言えるのです。
食品添加物と言えば、悪の根源でもあるかのように見られがちですが、製パンにとって、多品種のパンを大量に作らなければならない場合、改良剤はなくてはならない味方であると感謝しなければならないのです。
もし、これを使わずしていつも通りの品質を保とうとするならば、徹底した温度管理と、長時間労働が待っていると言う事を、覚悟しなければならないのです。
私たちは、食品を製造する側の人間として、正しい食品添加物の効果と効能と安全性を学び、しっかりとした信念をもって、これを使用するべきだと私は考えますが、皆様はいかがでしょうか・・・・
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最終更新日 : 2023-08-11