FC2ブログ

ベーカリーアドバイザーの部屋

パン作りのお悩み解決、超わかりやすくに挑戦しています。

Top Page › ベーカリーの展望 › 焼成冷凍の展望 › 焼成冷凍へのチャレンジ
2019-03-03 (Sun)  16:00

焼成冷凍へのチャレンジ

焼成冷凍と言うと皆様はどのようなことを想像されますか?

買ってきた焼き立てパンを冷凍すること??

それとも作ったパンを冷凍保存すること??

それとも冷凍保存専用のパンを作ること??

いやいや、読んで字のごとく焼いてから冷凍した凍ったパンのことでしょ・・・

とまあ若干表現方法はまちまちだとは思うのですが、ここで言う焼成冷凍とはまさしく、

焼いた後に冷凍保存し、自然解凍で食べることができることを目的とした製造方法

のことを指します。

焼いたパンを冷凍する・・・ということに長年にわたり興味を持ち、焼き立てパン屋さんにも随分と紹介したりしてきた経緯があります。

また、このブログ内においてもその特徴に関しては何度か触れてきたわけですが、ここで更に細かくその魅力にせまれたらと考えています。

パンを冷凍すると言っても、商品によっては非常に難しい製法となってしまうこともわかり、何度も何度も挫折を繰り返しながらたどり着いた結論もあります。

一般的にはどのようなパンも冷凍保存することができ、しかも解凍するだけで美味しく食べることができるということはすでに検証できてはいるのですが、一部のパンにおいてはなかなか不安定な部分が隠し切れないでおりました。

今回ご紹介するのは、その中でも一部のフランスパンによっては、解凍後に皮が剥がれやすくなるという事象です。

すべてのフランスパンでそうなるわけではありませんでしたので、特に気にすることなく冷凍をお勧めしてきていたのですが、まさに大量の、しかも生地重量の大きなフランスパンを冷凍するという仕事を請け負うことになった際、それはそれは解決までに時間のかかる大問題に発展することになったのでした。

今回は、その問題点と解決までの経緯をご紹介しておきたいと思います。

ただしお断りしておきますが、焼いたパンを冷凍するという技術に関しては、様々な科学的検証に基づいた製法がすでに存在していることとは思いますが、私の場合は科学的にそれを裏付けるというような大げさなことは当然ながら行ってはおらず、完成品の賞味期限を裏付ける菌数検査程度しか行っておりませんので、あとは実際に食べて美味しいかどうかの判断がすべてとなりますので、取り入れるとしてもあくまで自己責任でお願いしたいと思います。

さて問題のフランスパンですが、正確にはソフトフランスの部類に入るであろう、砂糖と油脂を若干含む配合となります。

ですので、まず焼成冷凍で問題はないだろうと言うことでスタートした訳ですが、後にそのほとんどがクレーム品となって返品の山を築くことになるのでした。

実は、スタート段階からある程度の問題点を想定してはおりました。

一番の問題点は急速冷凍庫が急速ではなく鈍足であるという点。

二番目の問題点は一度に224本のパンを焼くラックオーブンである点。

三番目の問題点は成形機で成形しなくてはならないという点でした・・・

なぜこれらが問題点なのかと言いますと、まずは急速冷凍で説明しますと、焼けたパンをいかに早くマイナスまで凍らせるかによって風味や食感に大きく違いが出ることが分かっているからなのです。

冷えの悪い冷凍庫で時間をかけて冷凍されたパンというのは、表面が乾燥して剥がれやすくなり、かつ解凍してもパサつきのあるまずいパンになってしまうからなのです。

次にラックオーブンですが、これだけ大量の数を一度に焼くことはまだ良しとしても、これだけの数を成形するのにどれだけの時間がかかるか想像してみて下さい。

パンの大きさにばらつきが出ることは想像に難くないと思います。

ましてや「フランスパンの場合はクープを必要としますので、発酵後に焼くまでの間にもかなりの時間を要するわけです。

そして最後の成形機ですが、今回のフランスパンの長さの指定は45センチで生地重量420グラムでした。

その大きさの生地をきれいに成形するのは至難の業であり、実際には満足のいく製品が完成するまでに2か月を要しました。

これらの不安材料があるという点と、そもそも一番冷凍に向いていないパンに挑戦すること、そして何よりもクープのあるパンというのはそのデザインも重要であることから、機械生産するには最も向いていない、最も難しいことに挑むことになることは解ってはいました。

しかし、「だからこそあなたにお願いしたいのだ」という名セリフを聞いてしまった私には、もはや断るという選択肢はありませんでした。

成形機で成形を行うこと自体にもかなりの時間を要しましたが、何とか使いこなし、オーブンでの不安定もなんとかクリヤーできていよいよ本生産がはじまり、順調に製造を続けていた数日後にまさかの連絡をもらうことになりました。

「パンの表面が剥がれてしまって使い物にならないので引き取ってほしい」

「使えるパンと使えないパンを選別してほしい」

というようなクレームがお客様企業から入り、毎週末在庫品のチェックをする羽目になってしまったのです。

なぜこんなにボロボロと皮が剥がれてしまうのか、その見るも無残なパンを選別しながらも、その原因を探し続けました。

機械成形ですので、理想的とまではいかないにしても、そこそこ奇麗に成形されたパンをクープしてみてわかることは、その時点までは問題点がないという自信でした。

そうなるとやはり鈍足冷凍で商品が乾燥してしまっているのではないかという判断で、面倒でもビニール袋で包んでから冷凍したり、パンをしっかりと冷ましてから冷凍したり、冷凍庫内の風の強い部分に置いて早く凍るようにしたりと、様々試みてはみたものの、問題解決には至りませんでした。

当時は真夏でもあり、この冷凍庫を新しくするというのは費用の面でも時期的な面でも実行不可能だということになり、ならば生地の水分を多くして柔らかくしてみてはどうかという話になり、特に他に方法を探すことができないでいた私にとってはそうするしか道がなかったため、吸水をふやして柔らかい生地で試してみることとなったのでした。

しかしそこは心配が見事的中・・・

柔らかい生地は機械に絡んでしまって、半分くらいは不良品となってしまったのでした。

焼きあがって冷凍したパンは剥がれも少なく、一見これで行けそうだということになりはしましたが、半分が不良品になってしまうようではとても製造工程にはのせられません。

ということで、今度は焼成温度を色々と変えてみたり、時間を変えてみたりしましたが、やはり剥がれは完全には解決することができないまま2か月以上が経過してしまいました。

他のパンに関しては全く問題がないため、尚更どうして??という疑問が沸き上がり、しばらくは私にとっても針の筵状態でした。

そんな時、オーナーからこんな質問が出てきたのでした。

「もっとパンに水分を残すような焼き方は出来ないのかな??」

私としては、ありとあらゆる焼き方を試してはいましたが、オーナーとの約束を破ることだけは出来ないでいました。

それは、他社の冷凍パンはしっかりと焼いていないので風味が悪く美味しくないので、うちではしっかりと焼いた香ばしいパンを提供したい・・・という内容なのでした。

ですので、香ばしく焼くということだけは避けては通れない部分であり、白っぽいパンを作ることだけは厳禁だということで、焼成時間はある程度長めに設定せざるを得ないと考えていたのでした。

しかし考え方を変えて見てみると、よく焼けて色付きの良いパンであっても、焼減率の少ないパンはできないものか??・・・そう考えてみて見えてきたものがあったのです。

それは、色付きの良い配合に変更すれば可能なのではないか・・・という点でした。

配合はノウハウの部分になりますのでここでは紹介できませんが、砂糖以外で色付きに貢献する材料を配合し、さらに焼成温度を上げて短時間で焼くことができれば、パン内部の水分は保持できるのではないか・・・

そんな発想に気づくことができたおかげで、見事に剥離を回避することができたのでした。

とは言え、短縮できた焼成時間はわずか5分です。

たった5分違っただけで、こうも冷凍後の姿が変わってしまうなんて・・・

本当にパン作りは難しいと言えますし、設備の特性が違えば今回の解決法ではダメかもしれなかった訳で、またしても新たな難問をクリヤーできて心から喜んだ次第です。

ということで、フランスパンを焼成冷凍したいが剥離に悩んでいる・・・という方がいるとしたら、一番に行っていただきたいのは焼成温度を上げて焼成時間を短縮し、パンの水分が飛びすぎないようにすることです。

それでもダメな場合は、モルトを増やしたり色付きの良い小麦粉を選んだり、甘味料系を試したりして色付きを早くするような配合に変更しましょう。

でんぷん類も多種試作してみましたが、あまり期待した効果は表れませんでした。

もっとも、急速に冷える冷凍庫をお持ちなら、そもそもそんな悩みはないのかもしれませんが、設備も配合もみな違う中でも、どうやったらうまくいくのかをあきらめずに挑み続けることが大切なのだと改めて感じています。

ちなみに、パンを包む袋もとても重要だとは感じているのですが、その点は現段階では何もつかめていませんので、今後の研究課題とさせてください。

最後に、焼いてから冷凍したパンというのは、やはりとても風味があって美味しいと感じています。

皆様の感想もぜひお寄せくださいね。



関連記事

最終更新日 : 2019-03-03

Comment







管理者にだけ表示を許可