以前に知り合いの方から教えてもらって気になってはいたのですが、「あまり捏ねないで残りはパンチを数回行うことで生地が出来上がるんだよ」ということの意味が今一つ理解できないでいたところこちらのサイトでもそのようなことが書かれておりましたので、質問させていただきたいと思いました。
パンチと言うのはハード系のパンなどで比較的発酵時間の長い生地に対して、一度生地のガスを抜くようにしてたたんでいくことだと思うのですが、それを一回ではなく複数回行うことでよく捏ねた状態と同じ効果を得られるということでよろしいのでしょうか?
その場合、初めのパンチから次のパンチまでの時間はどのくらい空けるべきなのでしょうか?
また、何度かパンチを行っておりますと生地がぷりぷりとした感じになる気がするのですが、全部で何回行うのが良いと言うような目安はありますでしょうか?
それと、パンチを行う作り方に向いているパンと向いていないパンというものはありますでしょうか?
色々と一度に申し訳ないとは思いましたが、細かい性格なもので・・・
誠に良い質問をありがとうございます。
パンチに関してはあまり質問をいただくことがなく、つい大雑把な説明のみとなっておりました。
ここで改めて、ある程度ですが詳しく説明しておきたいと思います。
まずこのパンチという言葉を通常使う場合の考え方は、例えば2時間くらいの発酵時間のパン生地があったとして、中間で一度新鮮な空気を取り込んで、さらには生地にハリをもたせて残りの時間発酵させることで、よりボリュームのある、そして風味豊かなパンになることを目的としてほぼ一回行われる製法の一つになります。
さらに長い発酵時間の場合には2回行う時もあったり、非常に柔らかい生地の時や、力の弱い小麦粉やその他のライ麦とか全粒粉などを配合した、あまりミキシングを行うべきではないような生地に対しても複数回行うことがある製法の一つになります。
発酵途中のどの段階で、どの程度の力加減でパンチを入れるかによって、その後の生地の状態は大きく変わることになり、副材料で美味しさを表現するリーンなパンとは違って、シンプルな配合で発酵と小麦粉などの旨味を引き出すためには必要不可欠な製法だと思います。
さて、そんなパンチを用いて生地の捏ね時間を短縮しようという試みを行っている方がどれだけいるかは分かりませんが、いわゆるパン屋さんではミキサーという立派な機械がほぼすべてのお店に備わっているはずですから、パンチは行ったとしても一回程度だと思いますが、ここで言う数回パンチを行うという手法を用いて捏ねるの代用を試みる必要があるのは、いわゆる手捏ねを行っている方々に限定されることになろうかと思います。
手捏ねでパンを作られている方でしたらよくご存じのことと思いますが、ある程度粉っぽさがなくなるまではボールの中などでよく混ぜて、その後は作業台の上に取り出して、伸ばすと叩きつけるを結構な時間おこなうことになりますよね。
それが実際にはかなりしんどい・・・ということでニーダーなどを使われている方も多いはずです。
ごく少量の場合でしたらそれでも問題なく捏ねられるかもしれませんが、小麦粉2kg以上となるともう ”かなりしんどい” と言う表現になると思います。
このパンチで生地を作っていくという考え方と申しましょうか製法と申しましょうか、そのとらえ方とか目的というのは人によって違うとは思いますが、私の場合はあくまで経験上、しっかりと捏ねたパンの味が淡白になりがちであるという印象をもっていて、これは捏ねる際の摩擦が多すぎると小麦粉の風味が飛んでしまうのではないか、もっとうどんのようにのど越しの良いパンにならないものかというような発想からスタートしていて、キメ細かさとかフワフワとした膨らみを求めるのではなく、風味とのど越しを最大限に引き出すにはどうしたら良いかと言うことを念頭に行きついた製法なのでした。
このブログ内では何度もお伝えしてきましたが、パン生地と言うのは発酵している間に少しずつミキシングされているのと同じような内部活動を行っています。
つまり内部で摩擦熱が発生していることによって、温度も徐々に上昇していくわけです。
その際に、生地に対して小さな入れ物であったり、深い入れ物であったりした場合、生地は両サイドから挟まれて上にしか膨らんでいくことができずに、大きな入れ物とか横に広い入れ物で膨らませた時と比べると非常にコシが強くなりプリプリしてきます。
と言うことは、捏ね終えた後の保管状況と時間の経過というものをコントロールすることは可能であるということになり、何でどれくらい捏ねたかだけがミキシングなのではなく、フロアータイムも含めてミキシングと考えることができるのではないかと思いました。
そこで色々と試してみたところ、ハード系のパンに関しては間違いなくあまりミキサーで捏ねない方が格段に風味が増し、食パンや菓子パンなどでものど越しがとても良くなったのでした。
ただし、そのことだけにとらわれてしまうと、ふわっとしたパンには巡り会えなくなってしまいますので、あまり捏ねない代わりに発酵種などを加えることによって、キメ細かさの形成に一役買ってもらおうという発想になったのでした。
つまり、あまりしっかりと捏ねなくても、発酵種を入れることでキメ細かさをも実現しつつ、小麦粉本来の風味も得られると実感したのでした。
それからというもの、多くの方々に紹介してきたレシピにおいては、必ず発酵種が入るようになり、ミキシング時間はかなり短く紹介してきた次第です。
発酵種に関してはこちら生地を参考にしてみてください。
もちろん、ミキサーで捏ねること自体を否定している訳では毛頭なく、しっかり捏ねてキメ細かさを出す従来の製法にもたくさんの魅力があることは言うまでもありません。
ただ、ミキサーによる摩擦によって毎回状態がある程度不安定になる、パンの風味が違う時があるなどの違和感があり、もしかしたらグルテン形成と風味の欠落は表裏一体なのかもしれないと感じたのも事実です。
手捏ねで、家庭においても10個程度のパンを作るのでしたら、どのような捏ね方をしてもあまり変化は見られないのかもしれませんが、お友達にもあげたい、実家にも持っていきたい、会社の人たちにも・・・と、ついついどうせ作るならもっとたくさん作りたいという気持ちになりませんか?
そんな時は小麦粉1kg以上は捏ねなくてはなりませんし、そうなると摩擦も半端なくなってくるものです。
もちろん配合によってその後の管理方法は大きく違ってきますので、より細かいことが知りたいという方はメールにて問い合わせていただきたいと思いますが、ごくごく一般的なハード系パンでお伝えしておきます。
フロアータイムが2時間以内のフランスパンを作るとした場合、生地はボールで粉っぽさがなくなるまでよく混ぜて、その後もボールの中でやや体重をかけながら揉みこみます。
いつもよりも水だけは5%以上多くしてください。
捏ね上げの温度はいつもより1~2℃低い方が良いでしょう。
スタートから5分も揉めばOKで、とうてい生地にはなっていないような、ただのベタベタ団子のような状態だと思いますがそれで構いません。
一度ボールをキレイにして、その後はその中に薄く粉を敷いて生地を入れておきます。
表面はラップでもビニール袋でも構いませんので、とにかく乾燥にだけは注意してください。
真冬のような室内でなければ常温でかまいません。
約30分経過したら、生地を取り出してしっかり体重をかけて潰し、畳むか丸めなおすかしてまたボールに戻します。
生地量が多い時には畳んで、少ない時には丸めなおしで良いと思います。
この時に、高さが出ないようにしておかないと、次に行うパンチが辛くなりますので、なるべく平たくしておきましょう。
その後は20分経過するごとに同じように潰しては畳んでを繰り返し、合計4回も行えばもう大丈夫です。
後は普通に分割からいつもと同じように作業を行うだけです。
もし2回目以降にプリプリしてきて伸ばせないほど高さが出るようでしたら、まだまだ固いということですから、もっと水を増やしてチャレンジしてください。
水が増えると言うことは、完成したパンの内層がキラキラ、そしてモチモチとしてそれはそれは美味しいフランスパンになりますよ。
30分とか20分と書きましたが、慣れてきたら時間なんていくら変更しても構いません。
むしろ、生地状態が見れるようになってくることがこの製法の目的でもありますので、張り具合とか緩み具合などを自分なりに見つけて、何回行うことがベストなのかをつかんでほしいと思います。
手粉は多すぎるとだまになりますので、少なめで、サラダ油やオリーブオイルなどの方がむしろパンが美味しくなります。
もちろんバターでも構いませんよ。
食パンとか菓子パンなどの場合も、私の場合は初めから油脂も一緒に入れてしまい、水を増やしてパンチで生地を作っていきます。
捏ね始めはベタベタを通り越して、「こりゃやっちまったかな」みたいな状態ですが、フランスパンの場合よりも回数は1~2回多くなるとは思いますが、徐々にプリプリとして生地がつながっていくのが解ると思いますし、見事に普通に良く膨らむパンになりますよ。
ちょっとだけ難しいのは、クルミやレーズンなどを入れた場合なのですが、入れ物をする際にはさらに水を増やしておいて、なるべく薄く生地を延ばしてクルミなどをまんべんなく広げて配置し、優しく重ねていくようにしてください。
生地が硬いとレーズンは潰れて、クルミは粉々になってしまいますから、混ぜ物をする際にはベタベタ過ぎるような生地でスタートするのがコツになります。
それでも最終的にはしっかりとした生地になりますので、あまり捏ねていないのに水分の非常に多い生地となり、よりしっとりとした菓子パンになりますよ。
この作り方をマスターすれば、捏ね器は必要ありませんのでメルカリで売ってください(笑)
菓子パンとか食パンを作る際のフロアータイムが1時間以内と言う作り方は多いと思います。
そんな時は、初めは20分おいてからパンチを行い、その後は10分~15分間隔くらいで3回の合計4回行い、15分後に分割から入ります。
と言うことは、20+15+15+15+15で合計80分で分割となりますので、発酵時間が長引く分イーストはやや減らして、捏ね上げ温度は1~2℃低くしてほしいと思います。
配合によって生地のつながり方は違ってきますので、特に油脂量に関係して生地の完成時間とパンチの回数はマチマチになります。
ですが、そこはあまり気にせずに、とにかく色々とやってみることです。
とか言いながらも注意しておきたいことがあります。
生地への初めのころのパンチは非常に容易なのですが、だんだん発酵して膨らんできますので、生地切れを起こしやすくなります。
ここで生地を切ってしまってはもともこもありませんので、どうか中盤以降のパンチの際には生地を傷付けることのないように、優しく押す、優しく引っ張る、優しく畳むを心がけてください。
美味しいパンができたら是非報告してくださいね~
ホームベーキングでのパンチの活用はこちらの記事もチェック
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最終更新日 : 2023-07-30
Re: パンチでパン作り * by しずかな朝
ミヤシタさま、コメントありがとうございます。
すでに実感しておられるのですね、それはなによりです。
新たな発見などございましたら、また教えていただけると幸いです。
すでに実感しておられるのですね、それはなによりです。
新たな発見などございましたら、また教えていただけると幸いです。
私も1種類ですが手ごね、パンチで作っています。北海道小麦粉に水を入れた途端に香ってくる成分を逃したくないとの思いで作り出しました。高加水で柔らかく味のあるパンになりますね。