前回パンチで生地を作っていくという方法を説明しました。
興味のない方には????な内容だったでしょうね。
ただし、ご家庭でパンを作られる方にとっては、捏ねると言う作業はとても重労働ですので(手でこねている方限定ですけどね)興味があったら是非試してみてほしいと思います。
さて、たまたま数日前に手捏ねパンを作る機会がありましたので、珍しく画像を見ながら改めて説明しておきたいと思います。
また、今回はミキサーとかニーダーなどでしっかり捏ねたパンと、パンチで作っていくパンとでは何がどう違ってくるのか、利点と欠点のようなものもご紹介しておきたいと思います。
いつもいつも文面ばかりの説明と、たまに出てきても画像だけで、もっとわかりやすい動画はないのか・・・と言うご質問も当然ありますし、実際には動画もあります。
しかし、文面から読み解く、そして画像から生地状態などを判断すると言う行為の方が、自分なりのイメージとしてとらえることができるものと私は考えますので、細かいレシピも配合もない説明ですが、どうかニュアンスを感じ取っていただけたらと思います。
今回作ったのは、生地の中にオレンジピールを入れたメロンパンと、10%のロースト胚芽を配合した生地で作ったぶどうパンの2品です。
いずれも使用した粉の総重量は2kgです。
今回の生地はマーガリンとショートニングを10%ほど配合していますので、この油脂は初めから投入するのですが、液体の油を使う際には水と一緒に入れればよいのですが、油脂を入れる場合は一番最初に油脂と小麦粉を手でスリスリしながらソボロ状にしておくと、全体の混ざりがとても速くなります。
ボールの中ですべての材料を混ぜ終えて、粉っぽさがなくなったら台の上に移し、ほんの5分ほどズリズリしたものがこちらです。
今回はオレンジピールも初めから投入しています。
見た通り超デロデロで、まだまったく生地はつながっておりませんが、ここで終了してカードを使って番重に生地を移します。
今回の生地はあまりにも柔らかいので、番重にはサラダ油を塗っています。
そして20分ほど経過した生地がこんな感じです。
ほんの少しだけ膨らんだ感はありますが、ベッタベタの生地であることに変わりはありません。
この生地を一度パンチしていきます。
一回目のパンチは手に生地がくっつきやすいですから、手にもサラダ油をつけると良いでしょう。
パンチを終えると、すでに若干ですが生地がつながってきていることが解りますね。
そして15分ほど休ませて2回目のパンチを行います。
この時点ですでに生地はプリプリとしてきて、ハリが出ているのがわかります。
そしてさらに15分休ませると、かなり元気に膨らんできますので、そろそろ生地を切らないように優しくたたんでいきます。
3回目のパンチが終了した状態がこちらです。
もはや普通に捏ねた生地と変わらないくらいプリップリの生地になっています。
この生地を10分ほど休ませたら分割し、ベンチタイムをとってから成形に入ります。
パンチで作った生地と言うのは、どうしても表面付近だけがプリプリしてきますので、中の方は意外にべた付きます。
まだパンチが足りないのかな???と心配になったりしますが、分割丸目してベンチタイムを取っている間にそのべた付きもなくなり、普通の生地状態になります。
いや、普通と言うのはおかしな表現かもしれませんね。
というのは、初めの画像で見ていただいた通り、生地はベッタベタでした。
それもそのはず、通常よりも15%も多く水が入っていますので、ニーダーではとても捏ねられないような柔らかさだからです。
それなのに、パンチを行うと見事にこのようにプリプリしてきますので、この作り方をマスターすると、いつものパンが超多加水パンになり、完成したパンはそれはそれはしっとりとしたパンになるのです。
ここがパンチで生地を作る最大の利点かもしれませんね。
そして欠点としては生地がべた付き、取り扱いに慣れるまでは少しだけ苦労するかもしれません。
そしてメロン生地をかぶせて焼いて完成しました。
これで100個以上できましたが、そんなに一度に出来てもご家庭のオーブンでは焼ききれませんよね。
しかしこれくらいの規模のお店だとしたら、ミキサーなしでも超多加水パンができるということにもなります。
次がロースト胚芽入りのぶどうパンなのですが、レーズンはズリズリすると潰れてしまいますので、一回目のパンチの時に入れます。
まずは上記と同じようにすべての材料をよく混ぜ、作業台で5分ほどズリズリしていきます。
伝わるかどうかわかりませんが、デロデロです。
しかしもうこれで番重に移していきます。
前回も説明しましたが、捏ね上げ温度はやや低めにすることをお勧めします。
ちなみに、手捏ねでパンを作る場合、ほとんどの方が生イーストは使わないと思いますので、私の場合もインスタントイーストのみで行っています。しかもレッド(無糖用)です。
砂糖が20%以上入るような生地でなければ、ほとんど無糖用で大丈夫です。
20分ほど経過したら、作業台の上に生地をのせて薄くのばし、レーズンを広げながら並べていき、生地をかぶせて接着するように押していきます。
それをさらに引っ張って薄くしながら何度か畳んでいきます。
15分ほど休ませたら2回目のパンチを行います。
もうすっかり生地にもハリが出てきていて、レーズンもよくなじんできています。
さらに15分ほど休ませたら3回目のパンチを行いますが、思ったよりも生地が締まっている感じがしたので、今回は軽く三つに畳むのみにしました。
さらに10分ほど休ませたら、分割丸目をおこない、ベンチタイムを取ってから丸めなおし成形を行いました。
生地重量は50gの小さなパンにしましたので、これまた100個以上完成しました。
上部をカットしてグラニュー糖をかけて焼きました。
ちなみにレーズンは対粉40%でしたが、50でも60でも全く問題なく作ることができます。
超多加水パンなので、しっかり焼いてもいつまでも柔らかいパンになりました。
いつもはハード系のパンばかり焼いていましたが、今回は油脂をはじめから投入した生地でもパンチでしっかりとつながるのかどうかを試してみたくて作りました。
ハード系のパンでなくても、やはり超多加水パンはとても美味しいと感じました。
パンチというのは、通常行うパンチであっても生地の取り扱いにはコツが必要です。
どの位伸ばすべきか、どの位叩くべきか、どの位畳むべきか、どの位押すべきか、どのような状態で保管することが最適かなどなど、いわゆるそこが技術なのだと思うのです。
ですから、当然のことながら超多加水の生地を皆様がたやすく、しかも簡単に取り扱えるとは思えませんし、すると総合的には生地かえってダメージを与えてしまいかねないとも考えられます。
かと言って固い生地にしてしまったら、そもそもパンチすること自体が困難になり、おかしなパンが出来上がってしまうことでしょう。
いつもとは違う作り方をマスターしようと考えたら、当然ながらリスクはあるものです。
しかしそれを恐れていてはさらに美味しく・・・を追求することをできませんし、技術の向上も遠のきます。
ベッタベタの生地をいかに鮮やかに仕上げていくか、あなたの手の平に技術が宿るかどうかによって、今後作るパンの品質は格段に違ってくるものと思われます。
皆様、大いに手で捏ねてまいりましょう・・・(笑)
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最終更新日 : 2023-07-30