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2019-11-24 (Sun)  12:23

HACCPの実際の取り組み方とは・・・

HACCPに関しては前回書いた通り、今後は焼き立てパン屋さんであっても導入していかなければならないことになる訳ですが、サイトや講習などですでに勉強を開始している方も多くいると思われます。

「なんかとんでもなく面倒だな」

「ただでさえも掃除の時間が取れないのに、何考えてんの?」

そんな意見も聞こえてきそうですが、実際にはどうなのかといいますと、

そりゃどえりゃーめんどくせーズラ!!

なぜか名古屋弁?? 静岡弁??

まあ、食品衛生の世界というのは、作ることの忙しさにプラスして、片付ける・掃除する・除菌するなどが必須な訳でして、10時間以上ぶっ続けで製造して、そのあとに30分くらいは掃除・・・でもクタクタなのが現実なのに、その上ハサップを導入するとなると、今度はHazard(危害)
の管理も行わなくてはならないので、決め事がひじょーに多くなってくるのです。

ハサップの導入となると、それはそれは膨大な資料を作成し、それを確実に実行できるよう担当者を決めたり、チェックシートのようなものがアホみたいに多くなったりしますので、当然のことながら製造以外に費やす時間というのがどえりゃー増えてしまいます。

しかし、現実問題として少人数で運営しているようなパン屋さんがそれらを導入しなければならなくなるのかと言いますと、まずそれはないと思います。

恐らくはそれなりの講習を受けることが義務づけられ、「HACCPというのはこういうものですよ」「ですのでそれに従って衛生管理してくださいね」くらいがせいぜいで、食品衛生講習の内容にHACCPが盛り込まれて、提出書類などが多少多くなる程度だとは思います。

ただし、きちんとチェックシートなどを準備して社員に徹底しているお店と、そうでないお店の評価が分けれれる可能性はありますので、導入とまではいかないまでも、きちんと勉強をして、決め事を徹底する必要はあろうかと考えます。

さて、HACCPの実際に関しては、サイトなり講習会なりで勉強していただくとして、では現実には働く我々はどのような行動をとらなければならないのか、何が今までと違ってくるのかを、実際にHACCP認定工場で約3年間勤務した経験からお話ししておきたいと思います。

まず、HACCPを取り入れるということは、今までと比べて次のようなことに重点を置いていかなければなりません。

それは、異物混入を防ぐための対策と病原菌や雑菌の繁殖を防ぐための対策です。

それぞれに行うべき行動や、具体策が違いますので、分けてご説明していきましょう。

異物混入を防ぐための対策

異物と言うのは様々ありますが、いわゆる製造している食品に対して、使用した原材料以外のすべてのものを指しています。

例えば、虫とか、ホチキスの芯とか、髪の毛とか、カットバンとか、ビニール片とか、セロテープとか、ネジとか、ボールペンのキャップなどなど・・・

更に言うと、ホコリとか、糸くずとか、蜘蛛の巣とか、鼻くそとか爪などなど、どんなに細かいものでも、どんなに小さなものでも、その食品に本来含まれるべきもの以外はすべて異物になる訳です。

ですので、食品に万が一でも異物が入らないようにするには・・・と言うことで、身だしなみとか、工房内の整理整頓とか、虫が入ってこないような職場環境の整備をしなければならないのです。

例えば身だしなみと言う点で考えてみますと、目以外はほぼ何かで隠さなければならなくなります。

いや、目すらゴーグルを装着する企業もあるくらいです。

手袋に帽子にマスクに専用の靴といった完璧装備で、体内からでる髪の毛や汗や皮脂などの混入を阻止するわけですね。

それだけでも非常に窮屈極まりないわけですが、窮屈なのは身なりだけにはとどまりません。

工房内は虫一匹入れないようにあらゆる隙間を排除しなければなりませんし、万が一入った場合のことも考えて虫取り機のようなものも設置します。

もちろん、虫が好む食べ物の汚れがあると虫をおびき寄せることになりますから、パンのカス一つ、小麦粉の粒一つ残さないように清掃する必要があります。

しかもそれは天井から壁から床に至るまでのすべて、そして使用した機材はもちろんのこと、使用した、あるいは使用していなくても工房内にある機械類はすべて掃除しなければならないのです。

機械類の掃除って、具体的にはどこまでやるの??

外側を拭く程度ですよね・・・と思ったら大間違い。

オーブンの中、ホイロやドウコンの中にパンの焦げ一つ、生地や小麦粉の一つまみでもあろうものならやり直しです。

取り外しがきく機械部品などは、すべて取り外して洗い、そして除菌してから組み立てます。

有難いことにパン工房というのは、部屋の隅々まで粉が飛び散っています。

ですので、換気扇から蛍光灯に至るまでのすべてを掃除しなければならなくなります。

しかも毎日です。

HACCPを導入するためには、それらの掃除に関する手順なども事細かにマニュアル化しなければなりませんし、実際に行ったかどうかを記録しなければならないのです。

機械類すべての手順書を作成し、どのような順番で行うのかまで書かされます。

ある程度は適当でも・・・なんて考えていても、この方が効率的ではないかと言われて作成しなおしもあります。

もはや、何かを作りに来ているというよりも、掃除をしに来ているといっても過言ではないでしょう。

ここまででもすでにうんざりしてきますよね。

しかしやる方はもっとうんざりしますよ(笑)

HACCPを知らずに入社する人がいるとして、その人が行うことの一つ一つの行動について、確実にNGを食らうことがたくさんあります。

それはまず着替えから始まることでしょう。

ユニフォームの着替えには順番がありますし、手洗い方法も今までの様な訳にはいきません。

歩いていてもしも何かが落ちていても、拾うことはNGです。

または、拾ってしまったらすぐに手袋を交換します。

ボールペンやメモ帳、スマホや時計や指輪やイヤリングなどは工房へは持ち込めません。

ホチキスは使えませんし、袋に入った材料を取り出す際にも、決まった袋の切り方があります。

手袋が破れているかどうかを15分ごとにチェックしなければなりませんし、暑いからと言ってタオルで汗を拭くことも出来ません。

ハサミとかクープナイフとか日常的に使う備品は、いつでも同じ場所に保管しなければなりませんし、ナイフが欠けていないかどうかをクープするたびにチェックしなければなりません。

「チェックって、見ればわかるだろ」

と言いたくなるでしょうが、そうではなく誰がいつチェックしましたよという証拠が必要になるのです。

今までなら捏ね上げ温度や分割時間などを記録したり、タイマーをセットしたりしていたと思いますが、その他にやたらとチェック表への記入があるのです。

そりゃここまでやれば確かに異物は入らないよな・・・・とは思いたいところですが、実際問題として大手メーカーでも異物混入で自主回収なんてことはざらですから、これでもかこれでもかと厳しくなっていくわけですね。

正直書いているだけで憂鬱になってきます。

・・・がしかし、もう少し我慢して続けましょう。


病原菌や雑菌の繁殖を防ぐための対策

異物といういわゆる固形物なら、見れば混入が解る訳ですが、菌となるとそうはいきませんよね。

とはいえ万が一ノロウィルスなどに感染してしまうと、その工房はほぼ営業停止に追い込まれてしまうでしょう。

ですので、見えない敵ではありますが、予測して対処していくというのがこの対策にあたるわけです。

これももちろん身だしなみからして大切になることは言うまでもありませんが、菌と言うのは持ち込まないことも重要ですが、増やさないことはもっと重要になるのです。

したがいまして、原材料の保存方法とか保管場所、器具類の清掃と除菌などが重要点となりますし、持ち込まないと言う点ではとにかく手洗いと除菌が重要となります。

手袋の着用とこまめな交換は必須です。

ではこちらも具体的な内容を少しご紹介しておきましょう。

原材料というのは段ボールに入っていることが多いと思いますが、その段ボールは実はとても汚いと言われています。

虫や虫の卵、雑菌やら鳥の糞やら手あかやら毛髪やら何が付着しているかわからないくらいの経緯を経てはこばれてくるものがほとんどですので、まず段ボール自体を冷蔵庫なりに収納することは完全にNGです。

すべて中身を取り出してから収納しますし、使いかけのものはいつ開封したか、いつまでに使わなければならないかをシールに書いて貼り付けます。

また、段ボールに触れた手袋は捨てますし、段ボール自体や小麦粉の袋などは一度エアーコンプレッサーをかけるか、あるいはタオル等で一度拭きます。

段ボールに触れた体は、エアーコンプレッサーやコロコロで付着したかもしれない汚れや異物を取り除いてから別の仕事につかなければなりません。

冷蔵庫、冷凍庫内の清掃や除菌はこまめに行い、タッパーやボウルなどに移した場合には、使用後十分に洗浄・乾燥・除菌します。

生肉や野菜などの処理は、使用するまな板や包丁なども分けて使用し、なるべく混合しないようにしなければなりません。

処理中も浮遊菌から守るために、いちいちこまめに袋をかぶせたり、冷蔵保存しながら作業を行います。

例えば調理室から工房へと部屋を移動する際には、汚れを持ち込まないように靴の裏の汚れを落として、手を消毒してから移動します。

部屋から部屋へ移動する際には、とにかく相互に汚れや菌を持ち込まないように、除菌あるいは手袋の交換、マットでの足裏清掃、白衣に付着した小麦粉などを落としてからの移動となります。

洗い物は特に注意が必要で、確実に汚れを落とすこと、そして速やかに乾燥させて保管場所に保管しなければなりません。

洗った器具のふき取りを行うタオルと、壁や棚などを掃除するタオル、倉庫やトイレなどを掃除するタオルなどはすべて使い分け、それぞれ終了後には洗濯して乾燥させなければなりません。

使用する洗剤や除菌剤、漂白剤などの管理にはとくに注意が必要で、専門の担当者以外は扱えないようになっています。

汚れがひどいからと言って勝手に登録していない洗剤を買ってきて使うなどということもNGになります。

・・・いかがでしょうか、お腹いっぱいになりましたでしょうか(笑)

人の手はいかに汚く、あちらからこちらへと汚れや菌を移動させてしまう病原体扱いされてしまうのが食品衛生の世界です。

どんなに時間をかけて洗ったとしても、手の平の菌を完全に取り除くことはできませんし、体内から出るよごれは時間の経過に従って増えていきます。

こんな世界にいると、母が手で握ったおむすびの菌数まで気になってきてしまいそうで悲しくなりますが、食品は完成してから時間の経過や温度によって菌数が倍増していくことは紛れもない事実なのであり、だからこその少しでも菌数を倍増させないための添加物使用なのであり、手洗いなのであり、除菌なのであり、安全に食べてもらうと言うことは、ここまでしなくてはならないのかと考えてしまいますよね。

企業の規模や職種によってHACCPへの取り組み方は違ってくるとは思いますが、今まではクレームが来たら対処する的なやりかたで済んだものが、今後はハザード(危害要因)を未然に防ぐための衛生管理が必要となり、自店の工房でのハザードは一体何か、それを防ぐにはどうしたら良いかを記した何かしらのマニュアルや管理表、そして実行した記録が必要になってくることでしょう。

焼き立てパン屋さんの焼き立て陳列は、今後は恐らくできなくなるでしょうね。

ケース販売になるか、あるいは蓋をすることになるのではないかと推測しますが、味気なくならないようにしてほしいものですよね。



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最終更新日 : 2019-11-24

* by シュウ
ハサップ全部こなしてたら普段の倍くらい時間がかかりそうですね…。

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ハサップ全部こなしてたら普段の倍くらい時間がかかりそうですね…。
2019-11-26-12:53 * シュウ [ 編集 * 投稿 ]