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ベーカリーアドバイザーの部屋

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2021-01-28 (Thu)  12:35

ミキシング状態を左右するのは温度?それとも生地量??

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2021年になって早くも1月が終わろうとしています。

相変わらず寒い毎日が続いていますが、冬のミキシング、皆さんどうされていますか?

空調がしっかり完備されているパン屋さんならそう大げさな違いは無いかもしれませんが、小規模であったり、はたまた極寒の地で開業しているお店などでは、冬の朝というのはそれはそれは寒く、軽く室温が10℃以下でのスタートなんてお店も多いはずです。

いやむしろ、極寒の地の方が空調に関しては管理されていて、日頃は厳しい寒さに慣れてはいない地域の方の方が油断している場合も多いかもしれませんね。

良くいただくご質問の中には、週に4日しか営業しない為に冬の朝はとても寒い環境からスタートしなければならないとか、週休二日なので休み明けはとても朝が寒くて生地温度がなかなか上がらず困っているというような内容のものがあります。

近年では特に個人店の場合はこのようにお休みをしっかり取るという方も増えてきていて、年中無休のお店からしたら考えられないような運営をされている方もいますね。

また、そもそも季節に無頓着で、ご自分は暑さ寒さに強いということで特に室温を気にされていないという鉄人?もおられます(笑)

冬のミキシング、あるいは真夏のミキシングもそうですが、温度管理、とくに生地捏ね上げ温度の安定というのは並大抵のことではありませんよね。

特に毎日生地量が全く違うようなお店の場合には、それはそれは経験豊富なスタッフがいないと回らないことでしょう。

皆様はいかがですか??

毎日捏ねる生地量が全く違う、使用するボールもそれに応じて日々違うという状況であった場合、それでも同じ捏ね上げ温度、そして同じ生地状態に捏ね上げることが出来る自信はおありですか?

最悪同じ生地温度にならなかったとしても、その後に同じ状態にもっていけるように温度管理を調整することは出来ていますか?

世の中の技術的な作業にはマニュアルというものがとても活躍していますし、大手のパンのように完璧に機械制御されている場合にはこれらは可能かもしれませんが、我々手作りパンの世界ではそこはまさに勘と経験とコツでしょう。

どんなに優れたパン職人でも、どんなに製パン理論を兼ね備えていたとしても、こればかりはL何分??M何分??では済みませんよね。

済むとしたら、それは時には70点の生地になり時には100点の時もあるが、気にしてはいられないということであって、それなりのパンが完成しているはずです。

それなりでは済ませたくない・・・という方のみが、ミキシングをコントロールする技術を習得できるのであって、その奥義をすでにつかんでいるという人は数少なく、みなさんは日夜そこに到達すべく頑張っているのだと思います。

このミキシングというものを時間で捉えるのではなく状態で捉えることが出来ている方と話をしていると、ミキシング時間と言うものはあまり話題には出てきません。

レシピにもミキシング時間というのは書かれていないことも多く、どんな食感のどんな風味のパンにしたいのかから逆算した生地状態と言う捉え方をされています。

しかし、現実にはありとあらゆる世にあるレシピには、必ずと言ってよいほど低速何分中速何分、捏ね上げ温度何分発酵時間何分と書かれています。

親切な場合はミキサーの回転数まで記載されている場合もありますが、そもそも回転数を気にしているパン屋さんなんていませんし、だからと言ってどうにもならないミキサーも多いことでしょう。

しかし正直というか真面目な方というのは、書かれているミキシング時間を忠実に実行しますので、「あれっ??」とは思うものの、疑うことをせずにその通りに進めてしまい、挙句に伸びの悪いのは何故なのかを悩んだり、書いていない修正はしてはいけないものであると勘違いされている方もいたりするのです。

また、特にチェーン店の場合は勝手にそのあたりを変更することを許されていない場合も多く、夏場のパンはオール過発酵、冬場のパンはオール未発酵なんてことも良く見受けられるわけです。

それらを改善する目的で生地改良剤が使われていることも否めませんが、本当なら正しいミキシングで安定したパンが一年中提供されることが理想なのであり、一年を通していかなる環境であっても、またいかなる生地量であっても、生地状態を見ながらコントロールできることが理想ですし皆様もそこに向かって改善を試みていることでしょう。

ミキシングの状態・・・と一言で言っても、そのとらえ方は人それぞれでしょうし、好みで構わないという部分もあると思います。

しかしそれはあくまで狙い通り、目的通りに捏ね上がっていいるかどうかが重要なのであり、思っていたのとは違う完成度になったしまったとしたら、それはミキシングが最適であったことにはならないのです。

また、捏ね方によって全く同じ生地であっても、それはそれはボリュームも食感も違うパンになることは皆さまも経験済みのことと思います。

捏ね方もそうですが、水分量の違いによってもミキシングの時間やギヤーの入れ方などは大きく違ってきますよね。

そう考えますと、毎回毎回同じ捏ね方で済むのだとしたら、それは毎回生地量も室温も水温も粉温も同じ環境であるということなのでしょうが、そんなことはあり得ないですよね。

ということは、最適ミキシングを捉えることが出来ていないということは、結論としては毎回色々なパンになってしまっているということになる訳です。

パン作りというのは、ここが非常に難しい部分だと言えるでしょうね。

誰かに教えるにしても、成形などよりも多種多様になり、教えずらいのがミキシングだと思うのです。

そこで今回考えてみたいのは、皆さんはミキシング状態をどこで、何で判断していますかという点です。

同じミキサーボールで生地量が多い時と少ない時では、そもそもギアーを変えますか?

それとも時間で調整しますか?

水温で調整しますか?

捏ね上げ温度は変えますか?

生地状態をどこでどう見るかという点を考えながら、こちらの画像をご覧ください。


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このように、生地がボールの壁にへばりついている時がありますよね。

油脂が多い生地であったり、柔らかい菓子パン生地などの場合にこのようになることが多いですよね。

強い粉を使っていれば、たいていの場合いつかはまとまってくるものですが、薄力粉をブレンドしたり、あるいは国内産小麦を使っていたり、あるいは中力粉を使っていたりした場合などは、このままいくら捏ねても生地がまとまってこないことがあります。

そんなときにこそかき落としをするのですが、かき落としてもまた周りにくっついてしまうことがあります。

それはまだ生地が出来上がっていない状態でかき落とした場合で、ある程度生地がつながってきていれば、かき落とした後はまとまるものです。

いつまでもかき落とさないでいると、そのままミキシング過多になることもあり、何分でかき落としと決めているお店もあることでしょう。

どの段階でかき落とすのがベストか、このように柔らかい生地にはどのタイミングで油脂を入れるべきか悩むことがあると思いますが、このように柔らかい生地の場合にはしっかりと8割がた生地を完成させてから油脂を混ぜるのがベストとなります。

早い段階で油脂を投入してしまうと、油脂が潤滑油の役割を果たしてしまい、なかなか完成してきません。

ひたすら摩擦で生地温度だけが上昇してしまいますので、このように柔らかい、そして油脂の多い生地と言うのはとても判断が難しい生地だと言えるでしょう。

次を見てみましょう


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このように生地を伸ばして膜の状態を確認するというのが一般的な生地状態の見極めだと思うのですが、実はこの方法は上手下手で膜の出方が違ってきます。

つまり、上手に生地を均一に伸ばすことが出来る人なら、この方法で状態を確認することは出来るのですが、下手な人だとどうしても膜が厚くなってしまったりバランスが悪く見えてしまいます。

一番理想的なのは、生地に触れた指の感触で判断すること、ほんの少し伸ばしてみて判断すること、生地の艶の具合で判断することだと思います。

ちなみにこちらの生地状態はとても良好だと言えます。

次です。


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こちらはバシナージュしたベットベトの生地ですね。

バシナージュはタイミングが命なのですが、あまり早い段階で水を入れてしまうと永遠につながらない生地になってしまいます(笑)

また、ハード系のパンをあまり作らないお店ではバシナージュ自体をあまり行っていないかもしれませんが、モチモチとしたとても美味しいパンになる製法であり、それこそミキシングを極めていないとできない製法でもあるのです。

見てお分かりのように、これだけゆるい生地ですとどうのばしてもこのように薄い膜ができます。

ただし、一見同じような薄い膜に見えますが、膜そのものの薄さではなくて弾力が決め手となるのがこちらの製法なのです。

ですので、ただ単に薄い膜が出来れば生地が完成しているという考え方は、柔らかい生地、特に超柔らかい生地の場合は判断基準にならないので注意しましょう。

ちなみにこちらの生地もとても良い生地状態だと言えます。

では次です。


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こちらは見てすぐに分かる通り、手捏ねした生地の状態になります。

基本的に手捏ねした生地というのは、どうしてもミキサーで捏ねた生地のような滑らかさにはなりませんし、これ以上捏ねるのもあえてお勧めは出来ないのです。

手では限界があるというのが生地捏ねの現実なのは確かですね。

キメ細かさにはやや欠けますが、手捏ねパンならこの程度で終了しておくことがベストだと考えます。

なぜなら、これ以上捏ねようとすると生地切れを起こしてしまい、かえっておかしなパンになる可能性があるからです。

ミキサーによるミキシングで考えますと、まだ70%の完成度だと言えるでしょう。

では次です。


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先ほどのミキサーの壁にくっついてしまう捏ねられ方とは対照的に、生地が硬めで少量の場合がこちらになります。

ミキサーボールの中でコロコロ遊んでしまうのがこの手の生地になりますが、フックで叩かれて押されてという状態のみで捏ねられていきますので、縦型ミキサーの特徴であるボールの壁とフックの隙間ですり延ばすという捏ねられ方が行われません。

ですので結論としてはとても長く時間がかかりますし、見極めはかなり難しくなります。

これこそまさに時間ではまったく判断できませんし、生地状態をしっかり確認しないといけない生地だと言えるでしょう。

もしかしたらどこまで捏ねても生地が完成しないことも想定できます。

ですのでこの手の生地の場合には、ミキサーでの捏ねは途中であきらめて、あとは手で行っていくことが正しい判断だと言えるでしょう。

種だとしたら問題はないのですが、この生地で滑らかなキメ細かいパンを・・・というのはちょっと無理でしょう。

では次です。

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砂糖も油脂も非常に多いブリオッシュの生地になりますが、このような生地の場合にも膜はかなり薄くなります。

なぜなら油脂が多いから良くすべってしまうのであって、油脂が多いということは手にもくっつきにくい生地になりますよね。

ならばどこで判断するのがベストなのかと言いますと、生地のサイドを見てみると艶々しているのが解ります。

この艶で判断するというのが正しいと言えるでしょう。

油脂が多い生地というのは、どの段回でもある程度薄い膜は出来てしまいます。

問題はどの程度滑らかに出来ているかになりますので、艶と手触りで判断するというのが正解となるでしょう。

だからと言って誰もがはいそうですかと解るものではないとは思いますが、結局生地の状態を見るということはそれらの総合的判断で見るしかなく、配合によってそのとらえ方も特徴も違うのだということに気づいていただくしかないのです。

では次です。


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こちらは手で捏ねた食パンの生地ですが、手捏ねではこれが限界だと言えるでしょう。

通常よりも油脂分や副材料が多いので、その分生地切れを起こさずに捏ねることが出来ていると思われますが、これもミキサーで捏ねた生地で言えば80%の完成度だと言えるでしょう。

では、80%の完成度ではいけないのでしょうか?

問題はそういうことではないのです。

全く同じ原材料と配合で作るパンだとして、捏ね方を80%で終了した場合と100%捏ねた場合とではいったい何がどう違ってくるというのでしょう。

一つには捏ねが100%ということは、小さな風船が無数に出来ることを意味していますので、キメ細かいという点では最高になりますよね。

キメ細かいということはイコールクラストが薄いということですから、弾力があってソフトで柔らかいパンになるということです。

では80%の場合はどうなのかと言いますと、風船の数がやや少ないわけですからキメ細かさの点ではそうでもなく、パンの大きさもやや小ぶりになります。

クラストはやや厚く、ソフト感に欠けるでしょう。

がしかしその反面、味という点では小ぶりな分濃厚な味ということになります。

クラストが厚いということは、風味が強く出るということにもなります。

だとしたら、例えば国内産の小麦粉を使ったパンであったり、あるいはライ麦とか胚芽とか全粒粉などをブレンドしたパンであった場合などは、ソフト感よりも味とか風味を強調したいと考えればこの方が強調できるということにもなります。

いかがですか?

ようするにどこを狙うかによって捏ね方を変えましょうというのはそういうことなのです。

単に窯伸びがどうとか、大きさがどうとか、ソフト感があるとかないとかだけではなく、食感・味・風味のどこにアクセントを置くかによって、捏ね方を変えることでより個性のあるパンになるのであって、そもそも低速何分、中速何分と言う考え方は単なる一般的基準であり、あくまで時間とか回転数がメインなのではなく生地の表情で完成度をイメージすることが大切なのです。

ちょっと室温が違うだけで、ちょっと湿度が違うだけで、ちょっと水温が違うだけで、ちょっと捏ねる量が違うだけで、毎回毎回同じような表情にはなってくれないパン生地達。

それをその後にどう同じ完成度に近づけていけるかというのも、技量の一つでしょう。

パン作りはトータル管理が重要な訳ですが、そのスタートであるミキシングというのがいかに大きな意味を持つのかと言うことだけは理解しておかなければなりませんね。


是非作ってみて下さいね。

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最終更新日 : 2021-02-04

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