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2021-02-12 (Fri)  13:10

オーブンコントロールの実際

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パンの陳列風景というのは本当に美しいですよね。

籠をうまく使ったり、立体的に陳列したりすることも美しさの秘訣ですが、何よりも商品そのものの存在感が最大の魅力でしょう。

このような籠を使ったとしても、置かれるパンが菓子パンだったらこうはいかないでしょうし、色使いというのも魅力的な陳列を行う上ではとても重要な要素になることは言うまでもありません。

これらのハード系アイテムがあることによって、またそのバリエーションを生かすことによって、より焼き立てパン屋の存在感を出せるのであり、他のアイテムの存在感をも引き立たせることに一役買うことにもなるでしょう。

菓子パンや焼き込み調理パンは相変わらずの人気ですが、ひところよりは随分とハード系パンの人気も上がってきている気がしていますが、皆様のお店はいかがでしょうか?

まだフランスパンがお飾りになったりしていませんか?

「硬そう」とか「どうやって食べたらいいかわからない」と言って敬遠されがちだったフランスパンを代表とするこれらのハード系パン達も、今ではかなりの人気上位グループに入ってきていますので、まだまだ品揃えに躊躇しているようでしたら、是非取り入れていただきたいと思います。


オススメのハード系パンを紹介している記事はこちら↓




さて今回は、前回に引き続きオーブンコントロールについて考えていきたいと思いますが、各お店の商品の違いや、もちろん配合の違いなどによって細かい部分にまでは入り込むことは出来ませんが、つかんでおいてほしいコツの部分をお伝えしておければと考えています。

店舗の規模にかかわらず、平窯があってコンベクションオーブンもあって、なおかつフランスパン専用窯までありますよ・・・なんてお店もあったりするわけですが、それは実際まれな話で、多くの個人店や小規模店では平窯しかないというのが実情のはずです。

日商30万円を超えるようなお店であっても、平窯が2台あるだけ・・・なんてことが多い気がしますし、そのあたりはやはり資金力にも関係があるでしょうから、特に個人店に限定して言えば平窯一本というのが平均的な設備であると言えるでしょう。

と言うことは、その平窯で菓子パンもフランスパンも食パンも焼くわけですから、いかに空き時間を作らずに焼いていくかがポイントとなります。

とは言えホイロではどんどん生地が発酵し、焼きが追いついていかないので過発酵のブカブカパンになってしまう、あるいはオーブンを空かせるわけにはいかないので多少未発酵でも焼いてしまい、大小様々な品揃えになってしまう・・・なんてことありませんか?

パンを焼くと一言で言っても、どんな順番で焼いていくことが設備に合っているのか、無理なく焼いていくことが出来るのか、そして何よりも品揃えを考えての順番で焼けていかないと売り上げには結びついていきません。

しかし現実問題として、そこまで全体を見据えて製法を考えだし、理想の順番で無理なく焼成を行うというのはとても困難であり、かなりの技量が要求されます。

オーブンをなるべく空かせることなく、なおかつ様々な温度帯を要求されるパン達をいかにうまく焼き上げていくことができるか、ここがまさにオーブン担当者の腕の見せ所となる訳ですが、実際には誰がどう焼くかによってかなりの品質のバラつきがでてしまうこと、そして焼き上がりの時間が大きく変わってしまうということを思い知らされてきました。

特に大手になればなるほどマニュアルはしっかりしている訳ですが、いちいちマニュアル書を見ながら焼くわけではありませんから、結局は担当者の技量にすべてがかかっていて、だれが担当するかによって全く違うパンが完成してしまうというのが現実です。

また、個人店で一人でパン作りをしているという方は別として、ほとんどのお店ではミキサー担当、分割成形担当、そしてオーブン担当が分かれていることが多く、それぞれの担当の方から他の担当の方の仕事内容に関してかなりのご相談が来ます。

「成形がバラバラで形が悪いのに、焼成担当の私の責任になってしまって困る」とか、「生地がベタッとしていて窯で伸びないのに焼成担当の責任になるので困っている」とか、「具が飛び出してしまうと焼き方が悪いと店長に言われて困る」とか、オーブン担当者というのはとかく損をしがちであることは多いですね。

逆に責任者がオーブン担当だと、何から何まで成形や生地のせいにされて困るという内容もありますけどね(笑)

しかし、オーブン担当者がパン作りに精通している場合にはこれらのすべてを凌駕して、瞬時に焼き方を工夫したり、生地状態や成形までアドバイスしたりする余裕すらあります。

つまり、オーブン担当者の技量いかんによって、そのお店のパン品質が決まってしまうと言っても過言ではないのです。


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では、オーブン担当者というのはどのようなことに注視しながら ”焼き” を行っていくべきなのでしょうか?


1,ホイロ(ドウコン)内の配置指示と温湿度管理で、焼成順序を把握する。


ただひたすら発酵してきた生地だけをホイロから取り出して焼いている人がいます。

これだと、そもそもどの段でどのパンを焼こうかと言う計画がなく行き当たりばったりなので、生地をオーブンに入れてから温度を設定するなんてことが普通に行われます。

もっと言うと、フランスパンを高温で焼いた後すぐに菓子パンを入れて、あっという間に黒くしてしまう人がいます。

それもそのはず、フランスパンを焼いた後に庫内が冷えていない段階ですぐに菓子パンを入れた場合、いくら温度を菓子パン用に変更したからと言っても、庫内をエアコンで冷ましてくれるわけではありませんから、菓子パンはすぐにクラストに火が入り、しっかりと膨らまないうちに表面が焼けてしまう、あるいは表面だけはある程度焼けている状態で中心部の生地が後から膨らんでくるので、中身の具が押し出されて表皮を突き破って飛び出してしまうなんてこともあるのです。

真逆で、菓子パンを焼いた後温度を上げる暇もなくフランスパンを入れてしまい、入れてから温度を上げてもすぐに上がる訳ではありませんので、ぼけた色の、しかもクープの開かないフランスパンを平気で焼く人もいます。

このような焼き方しかできない人というのは、オーブンの温度というものの実態がわかっていません。

驚くべきことだと思いますが、むしろわかっていない人の方が多いかもしれません。

当然ながら毎回同じようには焼けませんし、そもそも美しく焼けているなんてことはあり得ませんが、特に気にもかけないで平気でお店に陳列するするような方もたくさんおられます。

オーブン担当者がやるべきことというのは、膨らんできたパンをただオーブンに入れて温度を合わせることではありません。

ホイロが必ず数段あるはずですから、どの場所にどんな生地を入れてもらうかを指示し、温度と湿度を部屋別に管理することから焼成はすでにスタートしているのです。

つまり、1段に4枚の天板が入るオーブンなのだとしたら、4枚単位で同じ生地を同じ場所に入れてもらうことによって一緒に焼けるわけで、もし同じ生地が5枚あるのだとしたら、残りの1枚を他の何生地と一緒に焼くかを考えた上で同じ場所に入れてもらうことが重要なのです。

デニッシュ類やフランスパン類を菓子パンと一緒の温度湿度で発酵させる方も多いですが、これも本来あり得ない行いだと言わざるを得ません。

デニッシュ類は油脂が染み出てしまいますし、フランスパンはクープが不可能になってしまうからです。

しかしこれも全く普通に行われていることが多く、フランスパン生地がコンビニの中華まんのごとく表面が濡れ濡れテカテカで、ナイフが入らないのに入れて生地を潰しているのを何度も見てきました。

そういった基本的なことをオーブン担当者が理解していないと、そもそも「クープがきれいに割れないのはどうして?」という質問自体が理解不能となってしまうのです。

ここまでのまとめは、

どの段で何を焼くかを計画的に把握して、それに合わせてオーブン温度を設定しておく。

ホイロに入っている段階から焼成の組み分けを行い、一緒に焼くべきものは同じ状態で発酵してくるように配置を調整する。

天板に乗せない生地の場合(フランスパンなど)には、オーブン一段に入る量を把握したうえでホイロを管理する。

ホイロの温度と湿度は部屋別に使い分け、発酵時間をコントロールして渋滞しないようにする。


焼成というのは、ホイロの段階からすでに始まっているということを改めて理解しておきましょう。



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様々な種類のパンを出来るだけ短時間で揃えなければならない焼き立てパン屋さんですが、先ほども触れましたが、”膨らんできたから焼く” という発想では残念ながら理想のパンは完成しません。

種類の多いパンを渋滞することなく焼くコツというのは、いったいなんでしょう。


2,オーブンを空かさないコツは、焼成時間の違いをうまく利用すること。



焼くパンに対してオーブンが有り余っている・・・と言うお店はまずないはずですから、みなさんさぞあわただしく焼成を行っていることと思います。

オーブンを担当したことがある人ならだれでもが経験していることだと思いますが、乗せる具材が多いパンは非常に面倒で時間がかかりますよね。

具材を乗せている間にオーブンが空いていたとしたら、それはかなりのロスタイムとなりますから、その間に具材のいらないパンを焼成し、その間に具材を準備して次に焼けるように待機させておくというのが理想ですね。

しかし、そのパンがあまりにも短時間で焼けてしまうものだとしたら、やはりオーブンは開いてしまいロスタイムになってしまいますよね。

そこでお助けアイテムとなるのが食パンです。

食パンを間に入れていくことによって、具材の準備の時間がかなり取れますから、製法を工夫して小分けに食パンを焼くようにするとオーブンの空を防ぐことに貢献します。

また、フランスパン類も出来れば冷蔵生地などで対応して、一度にホイロを占領するようなことはせず、小分けでホイロに入ってくるようにすると、ハード系専用の段をキープした状態で残りの段で菓子パンをどんどん焼いていくということが可能になります。

良く見受けるのが、フランスパンを焼いた後に食パンを焼いて、そのあとに菓子パンを焼いて・・・みたいに各段バラバラに様々な生地を焼くという方法ですが、これだと温度を変えたりする手間、そして何よりも実際に温度が上がり下がりすることによる不安定を招きかねません。

上段でハード系中心、中段で菓子パン、下段で食パンと焼き込み調理パンと言った具合に、各段の温度をある程度決めた状態でホイロを管理し、オーブン温度の上げ下げを出来るだけしなくて良いようにしていくだけでもかなり品質は安定してきますし、意外とデジタルの温度変更と言うのは時間をとられるということに気が付くはずです。

そんなことを実現するためにも、ホイロやドウコンは各段で温湿度を変え、発酵してくる時間をコントロールしながら順次焼いていけるように工夫しましょう。


ここまでのまとめは、

具材を乗せている間にオーブンを空かさない工夫をしよう。

同じ段で色々なパンを焼くよりも、できるだけ段ごとに焼くパンの種類を決めよう。

冷蔵生地などを使って、一度にホイロを占領するような入れ方をせず、順次成形していくようにしよう。

ホイロは温湿度を調節して、発酵時間をオーブンキャパに合わせてコントロールしよう。


オーブン担当者の技量いかんによって、時間内にお店に並ぶ種類も、品質も、大きく違ってきます。

あなたの焼くパンが最高か最低かによって、そのお店は決まってしまうということです。

やりがいありますよね。

まだまだお伝えしたいことはありますが、また次回に。



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最終更新日 : 2021-02-12

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