
パン屋さんを取り巻く環境は益々厳しくなってきていますね。
留まるところを知らない原材料の価格高騰。
しかし実際にはまだ序の口でしかありません。
輸入できない原材料や、かと言って国内産もそれに準じて品薄になり、様々な業態においてとんでもない事態が起こりうることになるであろう今後に、非常に危機感を覚えています。
近年のコロナ禍においても、比較的業績を伸ばせていくことができたパン業界でしたが、これから迫りくる世界的な食糧危機、エネルギー危機に対して、政府も、そして何より私達国民一人一人の危機感の無さのせいで、今まで経験したことがないような事態を目のあたりにすることになると思います。
後悔先に立たず・・・とは人生において何度か経験させられてきたつもりですが、まさに今私達一人一人が国を守る行動を起こせなければ、後悔どころではなくなってしまうことでしょう。
物価はどんどん上がってきているのに、私達の所得は一向に上がっては行きません。
岸田総理が所得倍増計画なるものを打ち出してはいましたが、今ではすっかり影を潜めてしまい、相変わらず我が国の国民所得はここ30年間で全く伸びないままです。
国内総生産(GDP)が全く伸びていないのは、なんと世界で日本だけだという事実を皆さんは御存知でしょうか。
これは、わかりやすく言えばこの30年間、ずっと足踏みをしていただけということになります。
足踏みということは安定なのでは???と思いがちですが、そうではないのです。
30年も経てば、家だって車だって、そして人だって年を取っていわゆる劣化していきますよね。
足踏みして前に進まずにいたら、橋も高速道路も水道管も、そしてあらゆる技術や文化もどんどん錆びれてしまいます。
私達パン屋も、日々新しい商品を開発してお客様を飽きさせない努力を行うことによって、ファンの拡大を目指しているはずです。
つまり、留まるということはすなわち衰退を意味し、常に進化していかなければならないのが人間社会なのです。
正しい政策を実行すれば、すぐにでも景気回復できる力を持っている我が国ですが、どういう訳かずっと間違った方向を向いてきてしまっていて、国民の多くもまた間違った報道などにより、すっかり危機感を持てなくなってしまっている今、ほんとうの意味で自分の子や孫に豊かな未来を残したいと思うのであれば、我が国の現実をしっかりと直視すべきであると考えます・・・
とまあ、本来であればパンのことばかりを書きたいところなのですが、これからの数年間はとても平時と呼べるような平和な世の中とはかけ離れた現実が待っているかと思うと、パン作りにも身が入らずにすっかりブログも更新できないでいました。
しかしそんな中でも、これから新たにお店を開くという方も多く、そして更に業績不振に悩む方も多くいて、相談件数は過去最高を更新しております。
どうか皆様には、少しでも活力を持って取り組んでいただけるように、微力ながらもお手伝いさせていただきたいと願うばかりです。
また、ごくごく現実的な話としては、原材料の価格高騰のあおりを受けて大手でさえも値上げを余儀なくされているパン・・・
この現実に対して、米の需要が非常に伸びています。
日本人として、農家としては嬉しい限りですが、残念ながらパン食そのものにはジワジワとしわ寄せが起こって参ります。
ということで、これからのベーカリー経営では益々の差別化が求められてくることでしょう。
そこで今回取り上げたいのは、「より個性のあるパンづくりを」というテーマになります。
個性のあるパンというよりも、やはり流行を追うようなパンに人気が集中してきた昨今ですが、これからの数年間は他店ときっちりと差別化できていないと、結局価格競争を選択せざるを得なくなるような気がしています。
個性のあるパンづくりというのは具体的にはどういうことを指しているのかといいますと、わかりやすく言えば「そのお店でしか買えないオリジナル商品」ということになるでしょう。
価格が上がろうと、米食にシフトしていこうとも、揺るぎないファンを獲得していくためには「そこでしか買えないパン」を作っていくことが大切であろうと私は考えています。
もし今現在、自店にそれらしいパンが無かったとしたら、これを期に是非取り組んでいただけたらと思います。
グルテンフリーの食品がある程度認知されてきた現在においても、やはり大人気の小麦食パン。
小麦粉を使った食べ物というのは、我々にとってはもうなくてはならない存在になっていることは確かですよね。
パン作りにおいても小麦粉の選定というのはとても重要ですし、どのような小麦粉を使ってパンを作るかというのは、当然ながらお店の存続にも大きく関わってくる重要課題なわけです。
製粉会社によって国内製造される外国産小麦を始め、海外で製粉されたその国ならではの小麦粉や、国内産小麦を含めるとそれはそれは数え切れないほどの種類がある小麦粉。
パン屋さんの殆どがメインとして使用しているであろう強力粉を始めとして、中力粉や薄力粉も多数種類がありますし、それぞれのパンに合わせて調合されているミックス粉や製粉の仕方で分ける全粒粉や粗挽き細引き、そして麺用粉やパスタ専用粉やピザ生地専用粉などを含めますと、それはそれはたくさんの選択肢があるわけです。
どこのお店でもメインであるはずの食パンを、どの小麦粉を使って作るかというのはパン職人それぞれのこだわりでもあると思うのです。
しかしながら、そうは言っても現実に流行っている今どきの食パンの多くは、砂糖、生クリーム、蜂蜜、バターなどの副材料がメインのものが多いような気がしています。
ある一定期間の差別化という意味ではそれで良かったかもしれませんが、やはり毎日でも食べたくなる、飽きないパンという意味では、シンプルに小麦の味を味わえるようなパンではないかと思うのです。
極力副材料を含まないシンプルなパンというのは、それだけに製法などにより、そしてまた技術力により味が変わってくるので、作るのは難しいと言えますが、価格は高級食パンに比べれば格段に安く提供できます。
我が国の現在の経済状況を考えるに、街のパン屋さんでこれからも高級食パンが売れ続けるということはありえないと私は思います。
いち早くシンプルかつ低価格の食パンを看板商品にできるかどうかで、これからのベーカリー経営が決まっていくと考えています。
さてそこで取り組んでいただきたいのが小麦粉のオリジナルブレンドです。
特に個性的な有名店では多くの小麦粉をブレンドして使用していることが多い気がしますが、皆様のお店ではいかがでしょうか。
一つの銘柄だけを使ってももちろん美味しいパンは作れるとは思いますが、様々なブレンド方法を試すことで、意外な美味しさに出会うことが実はあるのです。
では実際にどのような小麦粉をどうブレンドしていけばよいのか、そのコツや考え方について解説していきたいと思います。
皆様お馴染みのパスタですが、パスタというのはある種特別なモチモチ感があると思いませんか。
パスタに使用する小麦粉というのはデュラムセモリナという小麦粉であることは皆さんご存知だとは思うのですが、パンに使用したことがある人はどれくらいいることでしょうか。
パスタというのは、もちもちとした弾力と独特の味わいがありますよね。
パンで「ももちもちして美味しい~」と言われるほどモチモチ感というのはもてはやされますが、その個性をデュラムセモリナは持ち合わせています。
「パンを作るにはパン専用粉でないと」というわけではないはずですから、このデュラムセモリナ粉をブレンドして独特の食感を試してみてほしいと思います。
ただし、あくまで個人的な感想ですが、デュラムセモリナを配合することで淡い黄色になり、美味しそうな生地は完成するのですが、パスタとして食べる喉越しのような食感は得られない気がしています。
それでも、個性が出ることだけは確かですよ。
ライ麦粉には特有の香りがあり、良く言えばモチモチ、悪く言うとベタベタとした食感になります。
画像の内層をよく見るとキラキラしていますよね。
この蒸しパンのような独特のモチモチ感といいますか粘り気のようなものがあり、小麦だけのパンにはない独特の風味も得られます。
ただしグルテンが極めて弱いために、多く配合すると伸びの悪いパンになってしまうでしょう。
5%~30%くらいで試してみることをオススメします。
また、風味を味わうという意味では、あまり副材料を使わないシンプルな配合にしたほうがライ麦の個性が出るでしょう。
ライ麦粉にも小麦粉同様に粗挽きとか細引きとか全粒粉などがあり、粒粒感があったほうが見た目の個性は出ますが製パン性、つまり伸びが悪くなったりもしますし、生地の取り扱いが難しくなったりします。
これは、粒が粗いほどグルテン膜を切ってしまうためで、ふんわりとかしっとりを得たいのであれば細引きか粉を選んだほうが良いでしょう。
ハード系パンを作る場合などは逆に粗挽き全粒粉を使用したほうが風味豊かなクラストになるでしょう。
上記の画像のようなハード系の生地で食パンを作る方が、確実に個性が出ることでしょうが、どうしてもクラストが厚くなりますから、「硬そう」と言って敬遠されるかもしれません。
しかし、この手のパンに人気が出てくるようになると、全体的にハード系パンにシフトしていくことができて、原価率が大幅に下がります。
ぜひそこを狙ってほしいと思います。
これらのクッキーやパウンドケーキなどの焼き菓子に使用される薄力粉ですが、その名の通り弾力が弱いおかげでサクサクとしたクッキーが誕生するわけです。
クッキーを強力粉で作ったことがある人はあまりいないと思いますが、とても弾力が出てしまい、クッキーとしてはいかがなものか・・・になりますが、それはそれで薄力粉と強力粉をブレンドすることで独特な食感と風味を得ることもできるのです。
パンも同じで、薄力粉をブレンドすることで歯切れのよいパンになったり、コクのあるぱんになったりします。
個人的には50%を薄力粉にして食パンを作りましたが、非常にしっとりとした美味しいパンになりました。
より上質の薄力粉をブレンドすることで、よりしっとり感を演出することができるでしょう。
一般的にオススメの割合は20%ですが、30%を超えると全く違う食感のパンになりますので、一度は試みていただけたらと思います。
ということで今回はデュラムセモリナ粉・ライ麦粉・薄力粉について解説しました。次回からは更に踏み込んで行きたいと思います。ブレンドで大切なことは、とにかくやってみるということです。最終的には食べてみて改めて知るということが多いのがブレンドですから、形式にとらわれることなく、思い立ったら即実行といきましょう。
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最終更新日 : 2022-10-30