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ベーカリーアドバイザーの部屋

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2022-11-06 (Sun)  07:27

より個性のあるパンを作るために・・・

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焼き立てパン屋がよりオリジナルなパンを品揃えしようと考えた場合、どうしても具材を中心に考える傾向が否めないと思うのです。

つまり、どのような新しい食材と自店のパンを組み合わせるか・・・

そのようにして完成したパンがお客様からも高く評価されてきたことは事実ですし、それこそが日本らしいパンの姿でもあるのかもしれません。

しかし私個人としては、どうしてもそれが本来の焼き立てパン屋のあるべき姿だとは思えず、事実私はどこへ行っても自分好みのパンを手に入れることは出来ていません。

それはどのようなパンなのかといいますと、ずばりシンプルな、小麦を感じられるパンなのであります。

どのお店でもパン・ド・カンパーニュなどが一種類くらいは置いてありますが、そこに力を入れているとはとても思えないものばかりですし、正直お飾り扱いの気がします。

もちろんそんなつもりで作っているわけではないと思うのですが、他のパンに比べたらそう簡単には売れないでしょうから、どうしてもほんの数個だけひっそりと置いてあるみたいな構図になるのだと思うのです。

菓子パン好きの日本人を育ててきてしまった業界の責任のような気もしていますが、シンプルでもそこでしか手に入らない食パンやハースブレッドを販売しているお店というのは、間違いなく長く愛されております。

どうか安易に菓子パン屋になるのではなく、長く主食として愛されるパンを販売するお店として、是非今からでもオリジナルパンの開発に取り組んでいただきたいと考えます。

ということで前回は「デュラムセモリナ粉・ライ麦粉・薄力粉」をブレンドしてみてはどうかという内容をご紹介しましたが、今回も引き続きご紹介していきたいと思います。



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グラハム粉という選択肢

グラハム粉を一度は使ったことがある方は多いと思いますが、あまり売れないので一品だけみたいな感じになってはいませんか?

グラハム粉というのは小麦の皮の部分が粗挽きで入っている、噛みごたえがあり、かつ香ばしい独特の香りがありますので、かなり個性的なパンを作ることが出来ます。

ただし、粗挽きであるがゆえにグルテン膜を切ってしまうので、なかなかふんわりとしたパンに仕上げるにはテクニックが必要になり、おも~い感じのパンとして売られているのが実情だと思うのです。

または、それを防ぐために配合量を少なくしてしまうと、結局個性が死んでしまいますから、たくさん配合してもふんわりしたパンにするということが必要になり、やや難しいパンとなることは仕方ないと思います。

また、グラハム粉よりは多く出回っているのが全粒粉だと思いますが、要するに粒粒感は少なくなりますから、味わいは出るものの個性としてはイマイチとなることでしょう。

もちろんどちらを使われてもかまわないわけですが、狙いを明確にして行わないと、個性を殺すことにもなりかねませんので、もう少し細かく見ていきましょう。


味を重視して食べやすいパンにするなら


小麦全粒粉には概ね粗挽きと細挽きがあります。

細引きを全粒粉と呼び、粗挽きのことをグラハム粉と呼ぶことが多いのですが、グラハム粉の場合は要するに小麦の表皮部分を全面に打ち出したい場合、より個性的な風味を出したい場合に使用する場合が多く、製パン性がよく、しっとりとしたいつもと変わらないパンに少しだけ変化を与えたいというような場合には細挽きを使用したほうが良いでしょう。

少しの配合でも、味わいのあるパンにはなりますが、そこにしか無いと言えるほどの存在感はのぞめないかもしれませんね。

ただし、あらゆるパンに全粒粉を配合しているお店も多く、つぶつぶ感があるだけで、何となく健康的なイメージを持ってくださるお客様もいるようですが・・・

細挽きの全粒粉といえども、5%を超えた配合量になると徐々に生地がベタベタとして取り扱いは難しくなってきます。

ミキシングや発酵時間にも工夫が必要になったりします。

食パンを作ろうとするとやはり少し難しいものになってくるとは思いますが、ハード系ならそう変わらない扱いで香ばしいパンになると思いますので、思いきって多めにブレンドしてみてほしいと思います。


風味強めで個性を出したいなら


ここはやはりグラハム粉を使って、超個性的なパンに挑戦していただきたいと思います。

グラハム粉の粒粒はかなり硬いものになります。

ですので、使用する際には必ず一度同量か、あるいは配合量の150%程の熱湯で柔らかくしてから使用しましょう。

オススメは150%の熱湯で処理した後に冷蔵保存しておいて、湯種として使っていただくと喉越しも良くなります。

もし一晩冷蔵を行うのであれば、翌日に捏ねる配合量の全量の塩をこの湯種に入れておきましょう。

そうすることで雑菌の繁殖を防ぎ、嫌なニオイが出ないようにします。

こうすることで、食パンなどに配合しても比較的伸びの良いパンを作ることができるでしょう。

かなり強めの個性となりますが、トーストに適した香ばしいオリジナル食パンになることは間違いないでしょう。



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米粉という選択肢

グルテンフリーを選択する人が多く求める米粉パンですが、今回の場合はそうではなく米の個性を活かす通常のパンとして考えていきます。

当然ながらグルテンを含まない米粉ですから、配合量を多くするほどに膨らみも悪く、重いパンになります。

しかし米粉をブレンドすることで、よりしっとりとした食感になり、独特の舌触りが楽しめます。

色が白いので全粒粉などのような見た目の個性は出ませんが、「しっとり」とメインに打ち出したい場合、独特のパンが完成することでしょう。

ただ、私個人としては米粉は味の点、風味の点であまり評価していません。

あくまで個人的な意見ですが、米粉を使うよりもご飯を配合したほうが間違いなく美味しいパンになります。

なぜなら、ご飯に含まれるデンプンがパンをしっとりとさせて、なんとも言えない甘みを引き出してくれるからです。

パン屋さんではほとんど考えられない取り組みだと思いますが、ご飯を入れたパンの旨味を知ったら、きっとびっくりすると思いますよ。

是非一度チャレンジしてみてください。


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フランス粉という選択肢


フランスパン専用粉というのは多く出回っていると思いますが、皆様のお店でも確実に何かしらを使用されていると思います。

フランスパン専用粉の一番の特徴というのは、ズバリ味だと私は考えています。

特に表皮が香ばしいパンになることは確かですから、この小麦粉をブレンドすると耳まで美味しい食パンということになるのではないでしょうか。

また、クラムもコクのある味わいが出ますので、食パンとして是非ブレンドしていただきたい小麦粉になります。

耳まで美味しい食パンにもなりますし、フランスパン専用粉をブレンドすると歯切れのよいパンになります。

湯種などを併用して、独特な喉越しのフランス食パンを作って欲しいと思います。

フランスパン専用粉をブレンドする際は、少し多めの50~80%くらいがオススメです。



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石臼挽き粉という選択肢

石臼で挽いた粉も多く販売されるようになりました。

小麦粉でもライ麦粉でもよく見かけるようになりましたが、かなり高額なのがたまにきずですね。

これらの粉は当然ながらすべて全粒粉となりますから、どうしても色が茶色であったり灰色であったりしますので、あまりふんわりしたパンづくりとしてのイメージは持ちにくいかもしれません。

画像のようにどうしてもハード系のパンとして作られることが多く、通常の食パンにブレンドしたとしても、必ずしも美味しいと感じることができるかというと好みの分かれるところかもしれません。

ただし、ハード系としてこの粉を使用した場合は、紛れもなく個性的な風味を醸し出しますし、健康的なイメージもありますよね。

個人的にも大好きな粉で、特にライ麦の石臼挽きは大好物ですが売れ筋というわけにはいかないのが実情でしょう。

ただし、確実にファンがつくのもこれらのパンの特徴ですから、どんどん試食を行う、あるいはサンドイッチなどにして品揃えを強化するなどして、大いに食べていただくことでまだまだ販路は広がるものと考えています。

私のイメージだとこの手のパンを購入されるのはどうしても男性が多い気がしているのですが、本当は女性にほどオススメしたいパンなのです。

なぜかといえば、これらのパンは適度な繊維質と鉄分を含んでいますので、腸内活性に一役買うからです。

便秘気味とか冷え性とかに悩む女性は多いと思うのですが、石臼挽き全粒粉のパンというのはそれらにパーフェクトに働きますし、何より消化に優れていますので少量でもすぐエネルギーに変わり、いい事づくめなのです。

これらを売りにして、どうか女性ファンを増やしていただけたらと考えます。

この粉で食パンを作ろうとするとどうしてもこんな感じになりますよね。


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モチモチとはするのですが、雑味とか複雑な風味も出てしまいますから、もし食パンで作ろうとお考えでしたら、50%くらいまでのブレンドに留めることをオススメします。

味わいとしては最高に個性的なパンになることは間違いないと思いますので、ぜひ品揃えにチャレンジしてほしいと思います。


ということで様々なブレンドに触れてまいりましたが、結論として申し上げたいのは、副材料をできるだけ含まない、シンプルなフランス食パンを是非品揃えすべきだということなのです。確かにしっとり柔らかく、そして甘い食パンは売れるでしょう。しかしそれは大手と高級食パン専門店の仕事です。私達街の焼き立てパン屋は、より小麦の味わいを全面に打ち出して個性を出していかないと、必ず価格競争や大手の資本力に負けてしまうことでしょう。ここでしか買えないパンを作っていくことこそが、街のパン屋の唯一の強みであることを知りましょう。




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最終更新日 : 2022-11-06

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