
あいも変わらずフランスパンが好きで、トマトもオリーブもニンニクも大好きで・・・となるとこうなりますよね。
現在の仕事との兼ね合いもあり、ひたすらフランスパンを作り続けている毎日なのですが、毎日毎日、そして毎回毎回微妙に美味しさが変わる気がしています。
もちろん高齢の私の舌がどこまで正確なのか?ということもあるかもしれませんが、それでもやはりほんの少し油断していると、確実に違う味わいのパンになってしまうのがフランスパン、いや、ハード系パンの難しさだと思うのです。
皆様は毎日同じ品質のパンが作れていますか?
もともとは菓子パンに魅せられていた所があった私でしたが、ハード系パンの虜になってからというもの、作っては食べ作っては食べの繰り返しで、その奥深さと難しさにも魅せられてきた訳ですが、そんな私のハード系パンの美味しさを追求する上での最近のトレンドが 焼成冷凍 なのでした。
焼成冷凍自体は数年前からその魅力にハマってはいたのですが、どちらかというと食品ロス問題に貢献するという観点でのスタートでもあり、油脂や砂糖をあまり含まないハード系パンの冷凍には剥離問題がつきまといますので、その問題との戦いでもあったわけです。
ですので、美味しくさせたくて冷凍していると言うわけではなく、あくまで冷凍もできる、必要なだけ解凍して販売できるという利点が考え方のメインであった気がしています。
しかしこの数年間というもの、ひたすらハード系パンを焼いては冷凍し・・・ということを行ってきてはっきりと気がついたことがあるのです。
それは、パンは冷凍したほうが美味しくなるという確たる現実でした。
いや、この表現は少し違っているかな・・・
冷凍に適した作り方ができれば、冷凍することで更に美味しくなるパンがある・・・というのが正しい表現かな・・・
冷凍さえすれば何でも美味しくなる・・・そんなわけありませんよね。
冷凍に向いているパンとそうではないパンがあることも確かです。
しかし、ほぼすべてのパンで冷凍後もしっかり美味しく頂くことを実感してきた私ですが、時にはそうでもないなと感じる時もあり、やはり何でもかんでも冷凍すれば美味しくなるとは到底言えず、ではいったいどんなパンなら美味しくなり、どんなパンなら冷凍に向かないのだろうと考える日々が続いたのでした。
そして、毎日の仕事の中で少しづつ作り方を見直しながら、何となくあることに気が付き始めたのでした。
それは、今まで一番に考えてきた発酵時間・・・なのではなく、焼き方だと確信した瞬間なのでした。
そして、もちろん配合も重要な要素ではあるのですが、やはり何と言ってもどのような小麦粉を選択するか、そしてどの程度捏ねるかが非常に重要なのでした。
捏ね上げ温度と捏ね方については次回解説していこうと思いますが、今回は一番の要である焼き方について触れておきたいと思います。
まずはこちらがそのフランスパンになります。
香ばしそうに焼けていますよね。
生地重量は400グラムで、なかなかのボリュームのバゲットになります。
見た目とは裏腹に、このバゲットの焼成時間はなんと12分なのです。
驚きませんか?
一体何度で焼けばそんな時間で焼けるんだと思われる方もいらっしゃるでしょうが、それはそれは高温で、しかもかなりの蒸気を必要とします。
そうでないと荒れまくってしまいますからね。
12分という時間からお分かりのように、パン内部にはかなりの水分が残されていることになります。
こんな生焼けのようなフランスパンを師匠が知ったら、恐らくぶっ飛ばされるかもしまないというほどの代物なのですが、見ての通りしっかりと焼き色だけはついていますよね。
実はこれがとても重要なところで、香ばしい焼色とクラムの水分量の多さというのが、冷凍したときに最高に美味しくなる条件なのです。
このパンを作りたてで食べても実に普通の味でしかないのですが、なんと冷凍することでとんでもなく美味しいパンになるのでした。
冷凍庫には半年前に作ったこのパンが未だに保存されていますが、今もなおとんでもなく美味しいバゲットなのです。
このある意味変わった製法というか焼成方法を用いて、今後もいろいろなパンに挑戦していこうと考えています。
皆様がお持ちのオーブンでは、一体どのように焼けば良いのかはそれぞれ違うと思いますので、あえて温度は書きませんが、いかにしっかりと表面を焼き、そして内部にどれだけ水分を閉じ込めることができるかというのが、ハード系パンの焼成冷凍に最も適した製法となることは断言できます。
この製法で作ったパンがお店の冷凍庫に保存されていれば、いつでも焼き立て以上の美味しさのハード系パンが品揃えできることになりますので、是非参考にしてみてください。
焼成冷凍のハード系パンの剥離問題と戦い続けて5年が経ちましたが、どうやら戦ったかいがありました。
そして今では焼成冷凍のパンこそ最強の美味しさだと断言できます。
焼成冷凍のパンというのはかさばりますから、当然ながら大きめの冷凍庫が必要になります。
しかし、生地を冷凍したり改良材を使用したりして無駄に原価を上げる必要もなく、製法に問らわれることもなく、焼成までを完結してからの冷凍なので、毎日すべてのパンを作る必要がなくなります。
しかも、冷凍されているパンを解凍した時点で焼き立てか、それ以上の風味を持つパンになるわけですから、今後益々導入する店舗が増えていくことは間違いないと思われます。
今までの製造コスト削減の基本は、パートさんだけでもできる、職人要らずの冷凍生地が主流であったわけですが、冷凍生地そのものが心から美味しいと言える人はそういなかったと思うのです。
技術の進歩によって冷凍生地でもかなりの高品質になったことは十分認めてはいます。
しかしやはりそれは菓子パン中心なのであって、具材ありき、高配合ありきなところは否めません。
ハード系好きなお客様にとっては、とても満足の行くものではなかったはずです。
しかし焼成冷凍パンならどのような製法で作ったパンでも完成後の冷凍ですから、冷凍のために発酵時間を気にしたり、イーストや改良材を大量に使用する必要もありません。
ほぼ普段どおり作ったパンでも、ほんの少し工夫するだけで冷凍保存が可能になれば、夕方以降、休日前や休日明けなどの品揃えにも大いに貢献するものと考えます。
チャレンジしがいがありますよ~
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最終更新日 : 2023-04-13