
2023年8月、毎日相変わらずのクッソ暑い日が続きますが、皆様体調の方は万全でしょうか。
私自身はついこの間、この仕事をしていて初めてオーブンでのパン出し入れの最中に頭が突然クラっときまして、おまけに心臓はバクバクで呼吸がままならず、思わず座り込んでしまいました。
その後すぐに水を飲んで涼しい場所で休んでいたら回復したのですが、これもやはり年齢からくるものには勝てないということなのでしょうかね。
自分自身も少しづつでも弱ってきているのかなと思う一方、年下でも年上でも、かなりの数の友人・戦友たちががんによってこの世を去るという悲しい現実を付きつけられる日々が続き、本当に生きるって大変なんだなと改めて感じる今日このごろなのであります。
そもそもエアコンがない、またはあったとしても全く機能していないというパン工房も多いことと思いますが、命あってのモノダネですのでこの際よくお考えになることをオススメします。
さて、前回ドゥコンディショナーの意外な使い方について書きましたが、そもそもドゥコンディショナーなんて持っていないというパン屋さんも意外と多いのです。
そりゃある程度の売上規模がある会社であれば必需品であるかもしれませんが、趣味が転じて工房に進化していったような個人のパン屋さんでは、まだまだドゥコンディショナーなんて贅沢品だと思われていることも確かでしょう。
でも、その便利さだけは見聞きしていて、もしあればだいぶ助かるのにな~とお感じの人も多いのではないでしょうか。
そこで今回ご紹介するお話は、以前にやはりドゥコンディショナーが無い工房へお邪魔した時の体験談なのですが、その工房では今でも(なんちゃって自然ドゥコンディショナー)を使って朝の工程を乗り切っているのです。
こちらの工房は店舗は持たずにパンは卸のため、できるだけ朝は早くから焼き始めたいということでしたが、ドゥコンディショナーなんて買うお金がない(当時は)ということで、ならばということで考案したのが自然ドゥコンディショナーなのでした。
ひこ
こじんまりと始めたい、初期投資を限りなく減らしたいというご相談を頂いた場合、私が薦める設備はオーブンだけです。あとはなくても意外となんとかなっちゃうものなので・・・お金がある人と借りられる人には設備はとても助けになることは間違いありませんが、そもそもそれ自体がリスクでもあるわけで、軌道に乗るまではなるべく出費は避けたいとお考えでしたら、是非相談くださいね。
その工房には当然のことながらホイロはありました。
しかしホイロというのは、大抵は使い終わったら次の日まで空っぽですよね。
”これはもったいない” と考えた私は、まずは成形が済んだ生地を片っ端から冷凍していきました。
そして全ての作業が終わった夕方に、冷凍しておいた成形後のパンを天板に並べてホイロへ入れていきます。
なるべくパンパンになるまですべての段を埋め尽くし、最後に番重に氷を入れて一番上に置き、ホイロのドアを閉めます。
氷の冷気がいい感じに下へ降りていき、密閉された室内の温度が少しづつ上がっていくことで生地が解凍して、朝には丁度よい頃合いで膨らんでくれていたらありがたいという浅知恵でまずはいどみました。
結果、まだまだ中心部が解凍しきれていない生地があり、これは番重にいれた氷が多すぎたのだと判断。
翌日は半分に減らして試みたところ、見事に朝には程よく低温発酵して焼ける寸前までの状態になっていました。
幸いオーブンにはタイマー機能が備わっていたために、出勤してすぐに焼成から入ることが出来て、出勤時間が2時間も短縮できたのでした。
もともとこちらの工房では朝の生地仕込みから分割成形までをすべて当日朝から始めており、出勤時間は2時でした。しかし、卸の関係でなかなか早く寝ることが困難であったために、一部焼成冷凍などを行うために冷凍庫だけは購入していただいて、それでも3時には仕事を始めなくてはならない状況でした。それがこの手法を行うことによって5時出勤へと移行することが出来ました。
自然発酵ですから、配合や成形方法によって膨らみ方は当然バラバラになります。
しかしそれを逆手に取って上手に断取れば、順に膨らんでくるものを順に焼いていけば良いことになり、時間差があることによってむしろこの手法は成立するのだということがよく分かると思います。
実際に行ってみると、低配合の食パンやフランスパン系が無理なく膨らんでくれて、普通に作るよりもむしろ品質が良くなる気がしました。
ゆっくり低温にて発酵させるというのは、これらのパンやブリオッシュなどの高配合でも中身の入らないものに効果的であると感じました。
菓子パンなどの場合、天板に多く乗せるとやはり中心部に乗せた生地だけ発酵不足になることがあり、菓子パンだとあまり多く乗せることが出来ないなと思いました。
また、具から水が出るようなものは、低温発酵中に水が出てしまい、パンがねちょっとしてしまうことがありましたので、やはり具無しパンが理想的だと感じています。
季節によって氷の量を調整したり、ホイロに入れるパンの量を調整したりと、季節の変わり目には何かと心配になる、けして安全な手法とは言い難いかもしれませんが、発酵のコントロールはパン屋にとっては必須のスキルですし、むしろいつもハラハラしながら、天候や温度に敏感になりながら行うパン作りというものがもしかしたら本来なのかもしれないとも言えますよね。
この他にも、スチームのないオーブンでフランスパンを焼く方法とか、ホイロの無い工房でのパンの発酵のさせ方とか、ミキサーのない工房での生地の作り方などなど、
まじでーっ!!
というようなことをさらっと伝授することを得意としておりますので、気になる方はどうぞお問い合わせくださいね。
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最終更新日 : 2023-08-10